アー君

スサーナのアー君のレビュー・感想・評価

スサーナ(1950年製作の映画)
4.0
珍しいブニュエルのファム・ファタール(悪女)。メキシコ時代のノワール全盛期だとは思うが、先取りしている感じもあった。スサーナを演じたロシーナ・キンターナは強かな悪女の典型を上手に演じていた。

とは言いながら内容において緊迫するサスペンス的要素はないに等しく、ホノボノとしたドラマであった。それにしても使用人や親父、息子たちが一人の女に簡単に振りまわさるザマは間抜けすぎて、呆れて物も言えなくなるとはこの事だろう。また今回も場内でどっと笑いが起きていたが、どこか笑いのツボが日本人の好む間のタイミングに近いのではないかと思われる。

女が使っていたハンカチに親父が偏執的なところをみせる場面があったが、脚を舐め回すような撮り方もあり、ブニュエルらしい呪物的な描き方は健在である。

突如訪れる急展開と幕引きに強引なところはあったが、古き良き銀幕の時代であれば、これも良しとしようではないか。

〈スペイン・メキシコ時代のブニュエル〉
[シネマヴェーラ渋谷 17:25〜]
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