菩薩

ありがとうの菩薩のレビュー・感想・評価

ありがとう(2006年製作の映画)
3.6
特筆すべきはやはり前半部の震災描写であろうが、東日本大地震が水の震災であれば阪神・淡路大震災は火の震災であったとの記憶を呼び起こすのに充分過ぎる説得力と本気度、焦土と化した街の再現など今そこにカメラを持ち込んだ様なリアルさがあるし、実際のニュース映像とも引けを取らぬ火災の描写には身の毛もよだつ。後半は打って変わって実話ベースのベタなドラマへと転換していくが、赤井英和の若干稚拙な演技を二人の女房(実生活の妻であるスーちゃんとグリーン上の女房役である薬師丸)の見事な演技が緩和しているし、赤井以上に酷い柏原収史が絶妙に中和している。瓦礫の中から救出出来ず火に包まれていくあの手が街の復興を願う手へと繋がり、自分は人様と些細なる運によって生かされているのだとの感謝の手(手を合わせる事の意味合いの変化)へと繋がる流れに素直に泣いてしまう。最後はどうも終わりどころを間違えた様な気がするし、ところどころ邦画の悪い癖な様な散見されるのが勿体ないところではあるが、埋もれてしまうには惜しい力作。
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