田山信行

水の旅人 侍KIDSの田山信行のレビュー・感想・評価

水の旅人 侍KIDS(1993年製作の映画)
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現代のおとぎ話として非常によく出来てると思う。子どものころ観た想い入れ、込みかもだけど。

一寸法師の様な姿の墨江少名彦と名乗る水の精霊との出会いを通じてやや内向的だった悟少年が、水の語らう音に耳を傾け、自然を人を慈しみ正しき強さを示せるに至る成長を遂げていく。

17㎝の小さな侍が家内を探検して回ったり猫と戯れたりカラスと空中戦を繰り広げたり。子ども心にワクワクして楽しかった特撮映像の数々。非常に夢がある。当時の最先端のハイビジョンによる合成映像は今観てもよく出来ている。大人になった眼で見ると合成のカット数とてつもなくエグいなって思ってしまうのだが。

チョコレートが蜘蛛の味に似てるなとかの妙なディテールやら回転するレコードをルームランナー代わりにしたりスーファミのコントローラーを足踏みで操ってみたりとそういう細かな描写も楽しい。その辺りの描写も物凄い労力だろうなって考えてしまうが。

アニメや特撮ヒーローものでだけではないオリジナルの子ども向け映画がこの当時はまだ少しあったと思う。学校の怪談とか。老若男女あらゆる世代へ向けたコンテンツ作ってこそだと思うのだけれど。本当アニメやヒーローものしかない、今。それ以外に何かあるだろうか思いつかない。

幼きこの当時では大林宣彦監督なんてぜんぜん認識してもいないのだが、その名を知る前から魅了されていたのだなぁ。何げに大林作品の常連俳優がチョイ役でもオールスターな感じで出演してたりして。あくまで子どもが主体だが、夢見がちな先生役でクライマックスでブッ飛んだ行動に出る原田知世が華を添えている。
田山信行

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