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悲しみの青春の一人旅のレビュー・感想・評価

悲しみの青春(1971年製作の映画)
5.0
第21回ベルリン国際映画祭金熊賞。
第44回アカデミー賞外国語映画賞。
ヴィットリオ・デ・シーカ監督作。

二次大戦勃発前後のイタリア北部を舞台に、時代の荒波に巻き込まれてゆくユダヤ人の若者たちの姿を描いた青春ドラマ。

イタリアの文豪:ジョルジョ・バッサーニが1962年に発表した半自伝的小説「フィンツィ=コンティーニ家の庭」を『自転車泥棒』『ウンベルトD』『ミラノの奇蹟』『ひまわり』の巨匠:ヴィットリオ・デ・シーカが映像化した青春ドラマの名作で、二次大戦勃発前夜:1938年から戦争中期:1943年までのイタリア北部の地方都市:フェッラーラを舞台に、その地に生まれ育ったブルジョワ階級のユダヤ人の若者たちの希望に満ちた日常の風景と、ファシズムの台頭によって青春時代の終焉を迎えてゆく彼らの行く末を、一組の男女の間で瑞々しく蘇る子供時代の回想場面を挿し込みながら描き出しています。

広大な敷地と屋敷を保有する裕福な家庭に生まれたユダヤ人兄妹(アルベルト&ミコル)と彼らの友達が織りなす青春の日々が群像的に活写されていて、自転車で颯爽と街中を走る場面や敷地内のテニスコートでテニスに興じる若者たちの姿が青春映画らしい晴れやかな映像の中に綴られています。ユダヤ人大学生のヒロイン:ミコルと彼女を幼い頃から一途に愛し続けてきたユダヤ人青年:ジョルジョの近づ離れずの微妙な恋の駆け引きの顛末も描写された“青春+恋愛 群像劇”でありながら、同時にイタリア国内におけるファシズム・ナチズムの高まりによってイタリアに暮らすユダヤ人に対する迫害の不穏な空気が少しずつ彼ら若者たちの元に忍び寄ってゆく作劇になっていて、前半の煌びやかな青春群像から後半における“ユダヤの悲劇”への鮮烈な転調が、一生に一度切りの貴重な青春時代を理不尽に奪われたユダヤの若者たちの哀しみと絶望を代弁しています。

そして、ユダヤ人兄妹を演じたオーストリア出身:ヘルムート・バーガーとフランス出身:ドミニク・サンダの美男美女コンビが若者たちの青春劇に格調を与えていて、中でも製作当時23歳のサンダは全身から只ならぬ大人の色気を放っています(雨でびしょ濡れ&裸にベッド が凄烈なイメージ)。
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