ベビーパウダー山崎

黒の試走車(テストカー)のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

黒の試走車(テストカー)(1962年製作の映画)
3.5
俺が増村に熱狂していた時期はすでに遠くだが、それでも一時間半真剣に見てしまう。愛も憎しみも変わらぬテンションで、暑苦しい男も女も顔をギリギリまで近づけ、彼らの行動を記録するかのように不意にえらく離れた場所からのキャメラでその光景を映す。生々しさと空っぽな存在の対比。動き続けるだけではなく、その静止が強い。
当然『巨人と玩具』と地続きの世界だが、会社の従順な部下というより、戦時中の「正しき」兵隊である高松英郎は増村が望んでいる役柄を完璧にこなしている。それにしても「強く、あえいで、死ぬ気で」を体現している叶順子が良い。役割の違いだけで、性別など関係なしに誰もが平等に勝負できるのが増村映画。