この映画で戦慄すべきは、アンドレオッティが直接何かを教唆したり指示したり、身内に向けて明言したりするような描写は一切ないということだ。アンドレオッティがあの恐ろしい表情をした途端に人が陸続と死に、あたかも関係性があるような仄めかしがなされているものの、あくまで仄めかしに留まり、本人が何を考えどう行動したかは映画を観ても一切分からないようになっている。ただただアンドレオッティの周囲で沢山の人が死に、アンドレオッティ自身は傷一つつかないという事実があるのみ。これがこの傑作を数段底知れないものにしているのだ。