SatoEmiko

あの夏の子供たちのSatoEmikoのレビュー・感想・評価

あの夏の子供たち(2009年製作の映画)
4.0
ある一家に訪れる幸福と不幸、再生を静かに描いた映画。
前半でたっぷりと描かれる、何気ない毎日に満ちた幸せと、父の自殺で幕を開ける後半の残された者たちの再スタートの物語。
引き金を引く、たった一瞬の動作で終わってしまった、これまで家族で積み上げてきた幸せな日々。それでも立ち上がり、前を見続ける残された家族たちの強さに爽やかな気持ちになりました。

会社が借金まみれになってしまい、自らその生を絶つ結論に至った父のように、先行きの見えない不安がのしかかってくるとき、つい日々の幸せに盲目になってしまうものだと思います。
日々の幸せよりも、不幸せの方が目に留まりやすく、本当は人生のごく一部しか占めていなかった不幸せに身を任せることは容易いもので、その不幸せに心が支配されてしまうと、「未来」など心から消え去ってしまい、そこには死という選択肢だけが残されてしまう。
だからこそ、エンドロールで流れる「ケ・セラ・セラ」。明日どうなってるかなんて、そもそもわかるはずもない。だから今の当たり前の毎日を精一杯生きたいと、目の前にある小さな幸せをかみしめたいと、生きる強さを感じさせられました。
この映画の感傷的にならない、坦々とした描き方にも「ケ・セラ・セラ」のメッセージを感じる気がします。
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