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スパルタカスのkuuのレビュー・感想・評価

スパルタカス(1960年製作の映画)
3.7
『スパルタカス』
原題 Spartacus
製作年 1960年。上映時間 190分。長
スタンリー・キューブリック初の長編カラー作品で、ローマ帝国を舞台にした一大叙述詩。
自由を手に入れるため、奴隷スパルタカスは剣闘士や奴隷で組織した軍を扇動し、ローマ貴族クラサスに大規模な反乱を起こす。
前作『突撃』に続きカーク・ダグラスが主役に起用され、アカデミー賞俳優ローレンス・オリビエが敵役のクラサスを演じる。
ピーター・ユスティノフの助演男優賞をはじめ、第33回アカデミー賞4部門を獲得。
ローマ帝国時代、将軍クラサスに叛乱軍を組織して立ち上がった奴隷スパルタカスの物語をスタンリー・キューブリックが映画化したスペクタクル巨編。
余談ながら、かつて赤狩りで追放歴のあるダルトン・トランボ(ハリウッド・テンの一人)が13年ぶりに実名で脚本を担当したことから、公開当時は右派や軍人を中心に非難や上映反対運動が起こった。
これに対し、ジョン・F・ケネディ大統領(当時)が事前通知なしで劇場を訪れて同作品を観賞し、好意的な感想を述べたことで、大ヒットにつながったそうな。

奴隷のスパルタカスは商人バタイアタスに買われ、剣闘士としての訓練を受けていた。
ある日、ローマの大物クラサスが訪れ、剣闘士の真剣勝負を要請。
スパルタカスと黒人のドラバは戦い、スパルタカスを仕留める寸前にドラバはクラサスに向かって槍を投げつけたため、その場で処刑されてしまう。そして好意を抱いていた女奴隷バリニアが、クラサスに見そめられ売られていくのを目撃したスパルタカスはついに怒りを爆発させる。 

映画の熱烈ファン(特にキューブリックフリークには)人が間違いなく知っていることやとは思いますが、今作品は監督が事実上彼の領域から削除した作品と云える。
つまり、キューブリックはあくまで監督として『雇われた』だけやと云い張り、死ぬまでこの映画を自分の作品とは認めず、『あの映画には失望した』とまで云っていたそうだ。
しかし、なぜスタンリー・キューブリックは今作品を見捨てたんやろか?
あくまでも伝聞ですが、キューブリックは、古代ローマにおける剣闘士と奴隷の反乱を描いたこの映画の製作に関して、芸術的権限だけでなく、管理的権限も完全に欲していたことも大きな要因やと思えます。

しかし、ブライナプロダクションは『スパルタカス』だけでなく、キューブリックが監督した以前の作品『突撃』(1958年)にも出資していたことに気づく。
ブライナ・プロダクションはカーク・ダグラスが自ら設立した独立プロダクションの映画会社であり、彼はこの2作品の主演やった。
映画製作のための資金をすべて持っていたことに加え、ダグラスには芸術的なビジョンもあった。ダグラスは『スパルタカス』のアンソニー・マン監督を解雇した。
わずか2日間で、キューブリックが彼の後任として雇われた。

『突撃』の撮影中、ダグラスはキューブリックが脚本を書き直して失敗したこと(彼らはオリジナル脚本で臨んだ)に対して批判や異議を唱えた。ダグラスの不満と芸術的影響力は『スパルタカス』の方がはるかに大きく、キューブリックは大いに悔しがった。
監督は映画のあらゆる面で自主性を求めたが、ダグラスは譲らなかった。
緊迫した妥協が成立したが、最終的にはダグラスが最後の決定権を握った。
キューブリックは自分をただの雇われ人だと考えていた。そして、二度とこのような立場に置かれることを許さなかった。

後に二人は、この映画の出来栄えと互いについて不平を云うことになる。
二人が一緒に映画を撮ることは二度となかった。

しかし、『スパルタカス』はバラバラのアイデアの寄せ集めではないし、オモロない作品ではない(個人的にはですが)。
この映画はまとまりがあり惹きつける。
ダルトン・トランボの脚本は驚くほど古代ローマの広大な歴史的威厳と暴力的な社会学的騒動を背景に、シャープに描かれた登場人物たちが配置している。
アレックス・ノースの独創的な音楽は、映画のために書かれた音楽の中でも最も素晴らしいもののひとつでした。
また、キューブリックの悪い経験にもかかわらず、彼は俳優たちを優れた作品に導くことに成功した(ピーター・ウスティノフがアカデミー助演男優賞を受賞)。
彼は、ロートンとオリヴィエの間の非常に現実的な敵意さえも、スクリーン上の財産に変えた。
その他の貢献も相当なものやった(例えば、戦闘シークエンスのスケールの大きさと迫力)。
結局、少なくともこの映画にとっては、巨大なエゴの衝突は僥倖であった。
この作品とキューブリックの他の作品について、より深い洞察と仔細の方は、ヤン・ハーランのドキュメンタリー『スタンリー・キューブリックライフ・イン・ピクチャーズ 』と、ヴィンセント・ロブロットの網羅的で非常に有益な伝記『STANLEY KUBRICK/映画監督 スタンリー・ キューブリック』に詳しくかかれてる(ただ日本語翻訳版の古本はべらぼうに高い)。
また、カーク・ダグラスの率直な自伝『THE RAGMAN'S SON』(邦題『ラグマンの息子』)も参考になるかな。
余談ばかりの感想になりましたが、今作品のローマ軍と奴隷軍の決戦は見事です。
この時代CGのなかったのに、いったいどないしてエキストラを動員したんか、どうやって撮ったんか。
(この映画には約10,500人のキャストがいたって記述もあった。)
スペクタクル映画の金字塔かな感動しました。
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