YasujiOshiba

蛇の道のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

蛇の道(1998年製作の映画)
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U次。24-61。『CURE』と同じ年に『蛇の道』と『蜘蛛の瞳』を撮っていたんだね。のりまくりの黒沢清を堪能。

16ミリのブローアップというけれど、配信の映像では問題なし。むしろいい感じにの粗さで、冒頭の坂道から登りの道路で引き込まれてしまう。何処か見た様な見たことがない様な、そんな道を行きながら、いつの間にかこの奇妙な復讐劇に迷い込んでいる。

たしかにどこか喜劇的。考えてみれば、ダンテの地獄編だって喜劇(コンメディア)。殺されたから殺してやろうと思うのは簡単。いざ殺す段になるとビビりまくる香川照之を、奇妙な私塾の講師の哀川翔がサポートする。

ふたりの佇まいが良い。香川のびびりと空元気は、あの歩き方が表現している。反対に哀川翔の立ち姿と少し体を斜めにして歩く姿がクール。でもその眼差しがただクールなだけじゃない。

少しずつ、なんか変だぞと思わせる高橋洋の脚本。その脚本を落とし込んだ黒沢明のショット。あのだだっぴろい工場に、鎖とホースと机と車を置いて、そこを田村正毅のカメラが移動しながら陰影を捉える。だから寄っても引いても話が動く。

それからあの奇妙な塾がよい。あそこにいる生徒たちの奇妙さ。会社員から主婦らしい人、そして中高生から小学生まで。ようするにみんないる。インクルーシブ教育じゃないですか。ある意味で理想の教育。だから考えさせる授業。何を考えているのかはよくわからないけれど、考えてはいる。側からはわからないけれど、みんな面白がっている。こういう世界ってあるよなと思う。だから、おもしろい。

そのなかの小学生のような生徒が、香川と哀川の間に、幽霊の様に立つとき、ぼくらはおそらく答えが解ける方角を教えてもらっていたんだろうな。

このインタビューが参考になりました。
https://moviewalker.jp/news/article/1010819/p4

さて、これをリメークしたというのだけれど、どんな映画になっていることやら、楽しみだ。
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