「風の輝く朝に」という詩的なタイトルに妙に惹かれて、観てみたら見事に大当たりの傑作だった。抗日映画だから広まらないのがもったいない。作品として素晴らしいのに。
1940年代前半、日本軍の支配に晒される香港の目まぐるしい動乱の時代を、あがいてあがいて前に進んでいく男女3人の生き様が色濃く描かれていた。
魅力だと感じたのは、まず主人公のフェイが堂々としていて小賢しいという解離した素質をもっている不思議な人物であること。カンと厚い友情を結び大志を抱く豪放な面と、夢のために進んで日本軍の懐に入る策略家な面。演じるチョウ・ユンファのミステリアスな雰囲気がたまらない。
カンは気合い溢れる熱血漢で、フェイと比べて少し不器用なところがキャラとしてとても良かった。幼馴染で恋人のナンは良家のお嬢様で、うら若く恐れ知らずなところがときどき危うげに見える。
苛烈を極める血なまぐさい喧騒の中だからこそ際立つ友情と恋の美しさ、儚さ、残酷さ。狂おしいくらいに全てが押し寄せてくる。
チョウ・ユンファは名前だけ知っていたが、この作品に出てることは知らなかったので初めてちゃんと見られて良かった。演技がとても上手い…怪優という印象を受けた。
シー・キエンとウー・マが脇役で出ていて、ウー・マの役が怖すぎた。あと出演ではないが武術指導はラムチェンインらしいし、出品人に洪金寶(サモハン)の名前があり、洪家班関わりなのがちょっとテンション上がった。
ああラストシーン、あまりにも強烈で忘れられない。この映画はとにかく私の心に大きな爪痕を残した。