ねぎおSTOPWAR

残酷な出勤のねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

残酷な出勤(2006年製作の映画)
3.1
韓国映画の大転換機のひとつ2010年前後。
「アジョシ」「ワンドゥギ」「SUNNY」「殺人の告白」「母なる証明」「建築学概論」「怪しい彼女」「新しき世界」「嘆きのピエタ」「7番房の奇跡」・・
この時期以降には韓流人気を間違いないものにしていく名作のオンパレード!上記以外にもたくさんあります。

・・そしてこの転換前の作品、あるいは同時期に作られていても、日本未公開だったりビデオ発売はあったとて埋もれているものって、やはり何かしら問題点があるわけで。

どんなにトータルで良い映画だとしても、重要なのは主人公の吸引力。上記したものは全てそこはクリアしてますよね。
それはタレントの人気でもいいけれど、一番は観客に感情移入させること。だからそこを世のプロデューサーや脚本家は懸命に作ろうとしているわけですよね。

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今回観た「残酷な出勤」とは、2017年「善悪の刃」そして2019年「SP国家情報局Mr.zoo」を撮ることになるキム・テユン監督の2006年長編デビュー作。
今作の場合そこ「感情移入させる」を逆行しています。

・・たぶんラストからの逆算で作っているのかなと思います。

一応あらすじ書くと・・
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サラリーマンのオ・ドンチョル(キム・スロ)は一攫千金を狙い、株に失敗、家族に内緒の借金にまみれ、妹を騙して車を売って利子の返済に充てる男。その利子の返済のタイミングで知り合ったマノと思いつきで幼児誘拐をするが、なんと脅迫電話に誰も出てくれず、あげく熱を出した子供を病院に置き去りにする。・・次は計画的に誘拐を試みる。女子高生を誘拐するが、そこにかかってくる1本の電話。「お前の娘を誘拐した。返してほしければその誘拐で3000万円をオレに渡せ」という誘拐犯を脅す誘拐電話。果たしてドンチョルは・・
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<以下はこうしたらどうなんだと2案>



耐えて耐えて最後まで観れば、「あーなるほどな」的な感覚はあるんです。
「こうしたいからスタート地点がここになったのね・・」と。
しかしね、スタートのドンチョルがパッとしない‼️
極めて中途半端で経済的に失敗し、人間的にも堅実さと賢さと度胸が欠けたキャラクター。

例えば嘘八百を並べるでも良いからドンチョルが破天荒な奴でね、一旦画面には大成功しているドンチョルが描かれ、妻も子も騙されている様子があり、それで引っ張っておいてから「あれれ?」と借金まみれの実態が見えてくるとかあればまだいいけど。
妻や妹を騙しても株を失敗し会社を首になり、家を担保にしもう破産寸前で利息の返済に追われて誘拐を試みるが、それさえもダメダメな男に魅力は感じないんだよなあ。
例えば日本の「彼女がその名を知らない鳥たち」はあえてそうしてラストで計画的にひっくり返しましたが・・
だから例えばもう一案。妻にも妹にも呆れられているけれど、娘だけはドンチョルのことを愛し、ドンチョルもまた娘のためだけには全てを投げ出すようなね、親として共感を覚える設定にしてくれれば・・。
多少その娘とのやり取りは玄関であるんですが、妻と同時に登場しちゃって母娘の対比がはっきりしない。そしてその時のドンチョルの態度がいまひとつ娘溺愛ではなかったんですよねー。だから最初に誘拐した子を病院に連れて行ってしまうくだりや、なんとか自分の娘を助けようとするドンチョルに共感がしづらいんです。
出来れば、妻はガーガー文句言って、そのあとこっそり娘が来て優しくするようなシーンにするとかね。で、借金まみれでダメな父ちゃんだけど、娘のためにいつか必ず成功するからなと誓わせるとかがあれば観客は「ガンバレ!」って応援する姿勢で行けるんではないかと。


<689>