Supernova

2001年宇宙の旅 新世紀特別版のSupernovaのレビュー・感想・評価

4.2
歴史上最初の道具「棒」の発明の瞬間。
宇宙進出を果たした近未来の人類。
二つの時代を繋ぐ奇妙なモノリスの正体とは。

Ultra-HD版はどうやらこっちだったっぽい。
通常盤とどう違うんだろう。

ほぼクラシック音楽に乗せた宇宙ドキュメンタリー。なんならストーリーとかなしに地球内外問わず、10時間くらいこの世界でのあらゆる人間活動を観たい。

本作以前にも『メトロポリス』や『月世界旅行』といった偉大なSF映画は数あれど、この作品は別格。
モダンと宇宙インダストリアルを見事なバランスで融合した美術の数々。いつの時代も鮮烈で新しい。一生色褪せない近未来感。

独特のリアリズムから繰り出される珠玉のホラー演出。僕にはこの映画はホラーとしか捉えられない。
果たして人類と人工知能の共存は可能なのか。個人的にAIによる反乱がドゥームズデイシナリオの中で最も現実みがあると考えているから、この映画はその恐怖を見事に描いていて芯から震える。

HALの赤い光を中心に据えた超クローズアップショットの恐ろしさたるや。点の威圧感。感情があるのかないのか分からない無機質な機械音声。赤の光というシンプルなもの一つで膨大な感情を沸き起こす。

『デューン』でフレメンの民が岩場で決闘するシーンは本作の猿が戦うシーンをオマージュしていると思う。

芸術的な宇宙映画としてよく引き合いに出されるタルコフスキーの『惑星ソラリス』は本当につまらなかったから僕はこっちの方が好き。セリフが理解できるという点で耳触りがいいし、技術的にもこちらの方が優れているし、純粋に見ていて楽しい。もはや勝負にすらなっていない気もするけど、そこは人によりけり。映画の歴史の中でどちらの方が偉大かと言えば、それは勝負云々どころではなく間違いなく本作だ。

すごい映画なのは事実だけど、やっぱつまんねえよな。中盤のHALとのやり取りあたりは面白いけど、それ以外はつまらない。でもそれでいい。芸術なんてそんなもん。

久しぶりに観れてよかった。
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