主人公の主婦(ジョーン・ベネット)とその娘に付き纏う組織やストーカーがひたすらしつこく描かれている、女性特有の神経症・不安心理を巧みに抉ったスリラー作品。
監督はキューブリックにも影響を与えた映像派、マックス・オフュルス。短い尺だが密度の濃いフィルムノワールの隠れた逸品と言える。いわゆる当時のアメリカに於けるセレブ家庭の描写、複雑な人間関係などが実直且つ丹念に描写されている。
名優ジェームズ・メイスンが唯一、主人公の心優しき理解者を演じていて安心する。じわじわとサスペンスフルな前半部分と比べて後半が些か端折り気味で物足りなく感じる。(しかし、それでもかなり上質な出来栄えなのだが…)
この頃の低予算フィルムノワールはきっちりと脚本が練られていて本当に面白い。