とうじ

無謀な瞬間のとうじのレビュー・感想・評価

無謀な瞬間(1949年製作の映画)
4.5
ノワール世界の中でおかんが大冒険するという、なかなか良い映画。
ノワール映画の観客のほとんどが男性だったであろうことを考えると、このおかん映画はかなりの汚れたおじさん達の心の琴線に触れたことだろう。
主人公は、殺人の隠蔽、お金がらみの脅迫、自分に好意があるんだか無いんだかわからない怪しげな人物をどう捌くかなど、犯罪物語のお決まりの中で奮闘しながらも、家計簿とか買い物とかもちゃんとやらないとだめっていうのが鬼畜。見ているこっちも頭がはち切れそうになる。
本作は、女性を主人公にしていながら、「エクソシスト」的な、男性の存在が欠けている家庭を持つシングルマザー(一応夫が単身赴任しているという設定にはなっている)が、その独立性ゆえ苦労するという保守的な内容であり、そこは時代を感じるところではあるが、何にせよ良くできた映画であることには変わりはない。
監督は、大好きな「忘れじの面影」を作ったマックス・オフュルス。とにかくカメラの動きと構図の移り変わりがうるさい!オフュルスのそういうとこが本当に好き。「輪舞」や「快楽」は、そういううるささだけで乗り切るのが、作品に芸術的高尚さを与えていたが、本作はかなり地に足ついた、純粋な娯楽作である。
あと、ある人物を押し倒して首を絞めている時に、向こうが地面に落ちている割れた瓶を手に取り、息絶えるまでそれを死にかけの弱々しい手で体に何度もぶっ刺してくるという、非常に痛そうな場面がある。
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