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おとなのけんかのkojikojiのレビュー・感想・評価

おとなのけんか(2011年製作の映画)
3.9
この映画はヤスミナ・レザによる戯曲『大人は、かく戦えり』(原題:Le Dieu du carnage、英題:God of Carnage)に基づき、レザ自身とロマン・ポランスキーが脚本を書いたものをポランスキー監督が撮った映画です。

のんchanさんのレビューコメントを読んで、観ることにしました。
舞台を映画化したものは、元々好きですが、特にこの映画は面白いです。

ワンシチュエーションの映画で、登場人物は最初っから最後まで4人。2組の夫婦の会話劇です。

冒頭、テロップが流れる中、川縁の道に、二人の子供、少し離れて数人の集団が映されます。二人の子供はこの集団の輪の中に入って歩き出しますが、その中の二人が何やらもめはじめて、喧嘩を始めます。すると、そのうちの一人が持っていた木の枝で、一人を殴ってしまいます。

映画は、殴られた子供の家に、殴った子供の両親が謝りに来て、4人で事実関係を文章にしているところから始まります。
・殴られた子供イーサン(カウワン夫妻
 父:マイケル(ジョン・C・ライリー)クリ
 母: ペネロピ- (ジョディ・フォスター)
・殴った子供ザカリー
    (ロングストリート夫妻)
 父:アラン(クリストフ・ヴァルツ)
 母:ナンシー(ケイト・ウィンスレット)

4人はなるべくことを荒立てないように努力しているのですが、どうしてもわずかな会話の中の言葉に、仕草に、行動に、抑えきれない感情が顔を出しては、態度が刺々しいものになっていきます。時に妻の立場、夫としての立場が顔を出し、夫婦間の微妙なずれもあって、話がどんどん複雑になっていきます。

私は最初レビューを書くなら、4人の態度で相手を怒らせているものを記録したみようかと思いました。
例えば、アランは、こんな状況の中で、仕事の電話をする。マイケルは子供の飼っていたハムスターを道端に捨ててきたというデリカシーのない話など、気づいたことを書いてみようと思いましたが、次から次に言葉のやりとりで行き違い、本音が交錯して、終わったと思ったら蒸し返し、とうとう最後までこのやり取りが続きます。とても書き切れるものではありませんでした。

かと言って全く退屈しません。よく気がけてみると我々の日常生活の至る所に「あるある」のオンパレードなんです。非常に面白い。

元々何故子供達はこんなことになったか、その事実関係も知らないで話あっているので和解できるはずがないのでますが。

巨匠と言われるロマン・ポランスキー監督がこんな面白い映画を撮っているとは思いもしませんでした。


No.1522 2023-552
2011年 フランス🇫🇷/ドイツ🇩🇪映画
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