恋するときめき、友情と羨望、踊る喜びを、せつなくもコミカルな演技と歌とダンスで綴る。
憧れの女性スターの相手役というビッグチャンスを、はからずも親友である相棒に、譲ってしまうことになる主人公(フレッド・アステア)。心の葛藤を抱えながらも親友のために尽くす姿がなんとも愛おしい。
舞台の裏で、アステアが一人、思慕する女性への思いを込めて、ピアノを奏で、歌い、女性の写真が表紙の楽譜をパートナーのように抱いて踊る。その様子を、エリノア・パウエル演じる、当の女性がそっと覗いている。たまらなく胸がときめいた。
そして最大の見せ場である「ビギン・ザ・ビギン」の曲にのせて踊る、長時間のタップダンスシーンが圧巻だ。「史上最高のタップと評される」と、チラシに書いてあったが、心底、陶酔してしまった。まさに夢のような至福の時間。
シネマヴェーラ渋谷さん、感謝です。