さしすせ

バロンのさしすせのネタバレレビュー・内容・結末

バロン(1989年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ミュンヒハウゼン症候群の語源となったし"カール・フリードリヒ・ヒエロニムス・フォン・ミュンヒハウゼン"氏がモデルの冒険物語。

婦人たちの下着を縫い合わせて作った気球で辿り着いた月、その街並みはまるで「イッツアスモールワールド」のよう。
星群で形作られた星座たちが宙を優雅に泳ぐ様子も好みだった。

エトナ火山の火口に落ちたバロンたちが出会った武器製造のヴァルカン。
彼の妻である愛の女神ヴィーナスの美しさたるや。登場シーンを思わず巻き戻してしまった。
ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」をあそこまでに再現出来るひとはユマ・サーマン以外にいないだろう。バロンでなくともダンスの1つや2つ踊りたくもなるだろうし、曲中にキスもしたくなるはずだ。

魚の腹の中然り、意気消沈していると途端に老け込み、冒険の意欲を取り戻すと若々しくなるというバロンの容姿の変わり様も分かりやすくて面白いと思った。

停戦を呼びかけるためにサルタンの元へと単身で向かうバロン。冒頭のトルコ宮殿での賭けを思い起こさせる処刑シーンでの家来たちの連携プレイは見応えがあった。「ピタゴラスイッチ」のような爽快感とバートホールドの不憫さ。

ホレィシオの凶弾に倒れたバロンだが、それ以降の展開こそが125分に及ぶ今作の肝だと考える。
バロンを信じて門外に雪崩れ出た人々が目にしたのはトルコ軍の去った跡。
誰を信じるか、何を信じるか、「信じた自分」を信じられるか、信用を原動力に突き進めるか。
そこを超えた先にのみ、「信じた世界」が実現する。
ホレィシオが揶揄していた"人間が月に行くなんて馬鹿げた法螺"も今や現実となっているくらいだ。

多くの人々がその可能性を信じ、それに向かって邁進することで開ける未来がある。
そう示してくれている今作そのものもまた、誰かにとっての"バロン"になり得るのだと思う。

「三部作」と評される作品群の1つ。
TSUTAYAレンタルのみで展開されている「未来世紀ブラジル(1985)」もぜひ観たい。
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