がちゃん

破れ太鼓のがちゃんのレビュー・感想・評価

破れ太鼓(1949年製作の映画)
3.9
実に愉しい日本クラシックのヒューマン・コメディー。
坂東妻三郎が初めて現代劇に出演したことでも話題になったそうです。

裸一貫から財を成し、
今や土建屋の社長である軍平(坂東妻三郎)。

とても立派な屋敷に住んでおり、6人の子供と妻、女中と生活しているが、この軍平、超がつくほどの頑固者。
家族のものは軍平に絶対服従。
家に帰ってきたら、全員そろって玄関まで迎えに出なければならない。
家族の人格は顧みず、
自分の手足のようにこき使っていた。

しかし子供たちも成長し、
長男は30歳。
そのほかの子供も自我が芽生え始めていた。

そんな折、軍平の仕事の秘書をしていた長男が、会社を辞めて起業したいといいだし、長女が、軍平の進めていた縁談を断り、
画家志望の青年と結婚すると言い出した。

一枚岩のようだった家族が、
バラバラになっていくのだが・・・

木下監督の演出はまるで洋画を観てるよう。
カラッとしていて、それでいて夜中の田園調布でのデート場面では、夢のような美しい情景を見せる。

封建的な軍平一家と対照的な、
長女が一目惚れした彼氏の家族。
年老いてもラブラブで、とても幸せそう。
母親がパリの絵を描いて父親がバイオリンを弾いているんだ。

音楽もいい。
一家で誕生日パーティーの時のメインディッシュが、
カレーライスというのも時代だ。

家族が家を出て行ったあと、
軍平が若いころの苦労を回想する場面は、
ホロリとする。

もちろんそれは、坂東妻三郎の緩急自在の演技に負うところが大きいのだが、印象的なカット割りで物語を進めていく木下演出はツボを押さえていて見事。

この作品を採点するなら、100点満点に近いほど気に入っているのだが、てんかん病者の描写が現代では差別的にうつるので、
その点が残念ながらマイナス。

でも、とてもいい作品ですよ。
おススメです!
がちゃん

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