かささた

スタートレック ジェネレーションズのかささたのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

何故か急にスタートレックが観たくなって今DVDを収集しています。この作品は最初のスタートレックと新スタートレック(ザ・ネクスト・ジェネレーション)の両方の作品にまたがる話で、キャストも両方から出ています。新スタートレックのテレビシリーズが終了するタイミングで映画版も世代交代させたのでしょう。
スタートレックはSFというか疑似科学というか自由な発想を物語の根底に許している風潮が全体にあって、ほとんどあらゆる現象が物語内で起きますが、その現象のリアリティや科学的根拠についての検証などはあまり重要ではありません。そしていつもその物語のテーマを語るのに必要な(悪い言い方をすると都合の良い)超常的な現象が起きます。しかし繰り返しになりますが、これはこれでいいのだと思います。テーマが重要であって、そのためには発想はどれだけ自由であっても良いというのがスタートレックの良いところなのだと思います。
この映画ではネクサスと呼ばれる天国が出現します。その人にとって一番心地のいい気持のいい環境、それがネクサスです。その場所に魅せられた(マルカム・マクダウェル!)がありとあらゆる手を使ってそこに帰ろうとするのに新シリーズの艦長ピカードと旧シリーズの艦長カークが巻き込まれてしまうというのが物語の概要です。
はじめにネクサスに接触したピカードは現実ではいない筈の家族や失ったばかりの甥に囲まれながらも、その天国が蜃気楼のようなまやかしであることに早い段階で気づきます。ピカードはソランの企てを阻止するために先にネクサスに接触していたカークを探し出して協力を求めますが、カークはネクサスの世界に魅かれていてピカードの話には耳を傾けません。現実世界に帰ろうとはしないんです。より年長のカークのほうが現実での宇宙探索の任務に疲れていて安息に魅かれていたのかもしれません。しかしカークは「現実では馬でジャンプすることが出来なかった大きな裂け目」を何の躊躇もなくジャンプすることが出来た時に、この世界は都合のいいまやかしであると気づくんです。ネクサスとは恐怖のない世界で、カークは常に恐怖を克服することにこそ面白味を感じてきた人間だったことが分かる良いシーンです。とても短いシーンなのにカークの性格や、それまでの人生、任務への取り組み方、それらすべてを集約しています。
現実に戻ったピカードとカークはソランと対峙します。そこでカークはミサイル発射装置を奪還するために、かなりの距離をジャンプすることになります。最後のジャンプになるのですが「面白かった」と言ってカークは息を引き取ります。
ネクサスとは荒唐無稽なファンタスティックな事象のように見えますが、生とは何か?という問いかけのために設定されたある種のメタファーなんですね。スタートレックにはいつもこのような問いかけが含まれているように思います。
かささた

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