Jeffrey

痛ましき無関心のJeffreyのレビュー・感想・評価

痛ましき無関心(1983年製作の映画)
2.8
「痛ましき無関心」

冒頭、第一次世界大戦の最中のイギリス。船長と娘、ダイナマイト売り、年老いた金持ち、婚約者、船の形をした奇妙な家、誘惑、本心、恋愛ゲーム、悲劇。今、心が壊されていく現代社会に生きる人間の姿が映される…本作はアレクサンドル・ソクーロフ監督の第2作目で、1983年に制作された作品だが、上映禁止処分を受けたので初公開は1987年だ。原作はジョージ・バーナード・ショーの"傷心の家"を基に描いた秀作で、この度DVDボックスを購入して鑑賞したが普通だった。



さて、物語は第一次世界大戦の最中、周囲の状況に関心を持てず、恋愛ゲームにうつつを抜かす人々を描いた作品で、舞台はイギリス。様々な家族や来客を混ぜて、ある日戦争の事など全く知らないかのように振る舞う人々が恋愛ゲームを繰り広げるうちに悲劇が訪れていくと言う内容である。



本作は冒頭から魅力的である。原作者のファンタジー物語と言う解説が文字化され、キャスト、スタッフの名前が流れ始める。そして"第一次世界大戦の出来事をより"となり、映像は白色人種が日本の着物を着て踊っている描写に変わる。髪型も日本風にしている。カットは代わりに資料映像のようなものが映される(モノクロにカラーを入れた古い画質)。1人の老人の古い資料映像が流される。バーナードショウと言う人物の名前が呼ばれる。

続いて、現代建築デザイナーも真っ青な風変わりで奇妙な形をした一軒家が360度カメラに収まる。そこの家の住人であろうと思われる老婆と若い女性が着物と言う言葉を連呼する。家の中に入る娘、湖の付近で自転車のタイヤを見る男と杖をつく紳士、資料映像が時たま挟まれ、複数の登場人物が一人一人個性を発揮し登場する。

着物を着ている女性はこの家の女主人ヘシオネ。ちょんまげ姿の男は夫のヘクター。そしてもう1人の女性は家事を取り仕切るギネス老婆やである。この家に若い女性の客人が訪れる。女主人の友人エリーである。そしてギネスがエリーを部屋に案内する。続いて女主人の父であるショトヴァー船長が現れ、彼女を探している。

ここではアリアドネと言う船長の妹の声が聞こえ始めてくる。そうした中、様々な登場人物が滑稽なドタバタ劇を起こす…と簡単に説明するとこんな感じで、日本でも有名な「マイ・フェア・レディ」の原作者の映画化である。


この作品を描く登場人物のシークエンスを挟みまくって展開していく分、情報量がコンガラがる。なかなか難解な作品である。物語自体はものすごく静かに展開されていく。淡々としていくのだが複数の登場人物の会話が途切れ途切れになり、新たな情報量が積み重なっていく分、なかなか理解しにくい演出になっている(意図的なのか偶然なのかわからない)。なんかドイツの映画作家ファスビンダーの作風を見ているかのようだ。


正直ソクーロフの作品の中では1番退屈かもしれない。全ソ国立映画大学の卒業制作で長編劇映画では本格的な処女作とされているようだが、独特な雰囲気と異色的な作品で興味深い事は確かにそうだが、自分的には多分彼のフィルモグラフィーの中でも1番好みではない。

それにこの作品の舞台が1910年代前半と言うことでジャポニズムの余韻が残っている時期を想定するとやはりキャラクターが東洋趣味を着飾っているのも何となくわかるが、意図的に違った認識で使っているところが確かにある。それは見ているこちらとしては不愉快かもしれないが、敢えて逆説的に言えば意図的に東洋のイメージをきちんと知っていることを踏まえて、行っているなら良いとする。ソクーロフ自体日本で撮ったドキュメンタリー三部作に加え、昭和天皇を主人公にした「太陽」まで作っている。

日本に関心があるのか、それとも東洋全体に関心があるのかよくわからないが、この作品には様々な東洋のものが登場する。それに面白いことに発明家でダイナマイトと言う武器を発明している登場人物が出てくるのだが、飛行船の空爆やノアの箱舟と洪水とイマジネーションをしていくような演出がある。結局最後全員が〇〇されるし爆発について取り憑かれている映画でもある。
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