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キューポラのある街のpa4のレビュー・感想・評価

キューポラのある街(1962年製作の映画)
4.0
いい歳をして、恥ずかしながら初見。鋳物の町川口が舞台で、鋳物工場の煙突をキューポラと呼ぶのも初めて知った。

軟弱な青春ものと思っていたが大違い。冒頭の音楽からして社会派。貧困や朝鮮問題、首切りと労組、頑固な男が威張る家庭――胸元をえぐるような直球がビュンビュンと。

私が生まれた2年後、1962年の映画だが、私が記憶する昭和(昭和40年代)より、もう少し世相が古いか。

誰かも書いていたが、山の手の戦後を描いた小津作品に対し、本作は下町の昭和を映しきった。まさに分断だ。

街中がたばこ臭く、狭い家に入れば、かすかにトイレのにおい。個室なんてなく、弟とはいえ、男の前で服を着替える十代の姉。

「あのころは良かった」などと礼賛できないほど、貧しい者は貧しい。職人のプライドが高いだけの父親。こんなのが昔はたくさんいたか。演じた東野英治郎は飲んで暴れて憎まれてを好演。多感な少女役の吉永小百合は、明るく、暗く、時にはシャウトし、みずみずしい演技が圧巻。ハッピーに思えるラストにも好感。

逆風の中、前向きに生きる。そんな時代だった。
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