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南国土佐を後にしてのodyssのレビュー・感想・評価

南国土佐を後にして(1959年製作の映画)
3.0
【「渡り鳥」シリーズの原型】

小林旭と浅丘ルリ子主演。この二人の「渡り鳥」シリーズの原型になったという映画です。タイトルは言うまでもなく(といっても40代以下は知らないか)ペギー葉山の大ヒット曲「南国土佐を後にして」から。ペギー葉山自身も本人役で登場します。

主人公の青年(小林旭)は、故郷の高知から東京に出て、悪い賭博仲間と付き合って犯罪をおかしてしまい、刑務所暮らしを経て出所する。その出所するところから始まります。賭博仲間が迎えに来るのですが、青年はそれを振り切って、まともな暮らしをしようと決意し、故郷の高知に帰ります。ここで故郷のお祭りシーンが出てきて、いかにも観光映画ふう。

故郷には母が一人暮らし。青年には兄がいたのですが、特攻に出撃して亡くなっている。昭和34年の映画ですから、こういう設定が可能だった時代なんですね。

青年は故郷で職を得ようとしますが、前科者ということで地元のちんぴらにも絡まれてうまくいかない。また、青年には恋人(浅丘ルリ子)もいるけれど、彼女は父の借金をちんぴらが肩代わりしたという理由から、ちんぴらのボス(といっても若い)と無理矢理結婚させられそうになっている。

あれやこれやで青年は結局再度故郷を捨てて東京で職を得ようとします。ここで、特攻隊で亡くなった兄の婚約者だったという女性(南田洋子)が東京で飲食店を経営していて、というふうに物語が進みます。彼女は青年を宿泊させるばかりか、何かと面倒を見てくれる。また、彼女の妹(中原早苗)が、浅丘ルリ子の存在にもかかわらず青年に熱をあげて・・・という設定にもなっている。青年はとにかくモテるのです。映画の主役はこうでないとね(笑)。

最後はなんとか収まるべきところに収まるのですが、といって小林旭が浅丘ルリ子と結ばれるのではなく、将来を約して青年が旅に出る、という終わり方です。主役ふたりが共通しているというだけでなく、「渡り鳥」シリーズの原型がここにあるという所以でしょう。
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