とうじ

少年のとうじのレビュー・感想・評価

少年(1969年製作の映画)
4.5
きつい。絶句する。
たまたま最近観た「ピショット」も同じような話で、ギリギリの社会構造の犠牲者となってしまった子供が体験する様々な出来事を描くものなのだが、あっちの子供は、シンナーとか大麻を吸って楽しくなっちゃったり、カツアゲをしにクラブに向かったらそこでかかってる音楽が結構よくてつい踊っちゃったり、飯をたらふく食ったり、エロビデオ見て股間をいじったり、強盗ごっこをしたり、やっぱり何かと健気だし元気なのである。
しかし、本作の少年は、嫌な真面目さとおとなしさがずっと彼の行動原理にへばりついている。なんか、60年間書類仕事してきて、生涯独身で、今は年金の足しのためにアルバイトしてますっていうくらい目が死んでる。
飯もまずそうに食べる。
一つ確実に言えるのは、教養のある大人が精一杯考えた上で、やはり行き着いてしまう絶望を、純粋で無知な弱い存在である「少年」の姿を使って主張する事で、その考えのインパクトを強いものにしようとする脚本上の魂胆が見える。
で、それが上手くいっているので、別にそれは必ずしも本作の欠点になったりはしてないのだが、いかんせん見ていて楽しくない。
とても良く出来ているのは間違いないのだが。
これを浅く、見やすい形まで持ってきたのが「万引き家族」なのだが、じゃあどっちが良いのかと考えてみると、やはり軍配はこっちにあがる。
とうじ

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