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火垂るの墓のsupgreenのレビュー・感想・評価

火垂るの墓(1988年製作の映画)
4.5
最初に言っておくと、ジブリ作品の中では最も暗く、決して子どもと笑ってワハハと楽しい気分で鑑賞する作品ではない。
だけど子供も大人も、また日本人でない外国の方にも、人生で一度はぜひ観てもらいたい反戦映画の傑作である。

決して反米映画として描かれていないのも、それが高畑勲監督の描きたかったものではない事の現れでしょう。この映画が伝えたいのはそこじゃない。

14歳の清太とその4歳の妹、節子との兄妹愛に心温まる。太平洋戦争の渦中に巻き込まれていく2人。焼夷弾が街を焼き尽くし、飢えに苦しみ栄養失調で徐々に弱っていく身体。時に無惨に、不思議と時に美しく、戦争のリアルを包み隠すことなく描いています。

多くの人が、物語にハッピーエンドを求めるのは、きっと世の常なのでしょう。
私も例外ではなかったが、この物語をみてから少し見方が変わった。

この作品には冒頭から最後まで希望も救いもない。それは、ドキュメンタリーや史実に基づく話を題材に、最も伝えたいことが戦争の悲惨さや、災害から学ぶ教訓などであれば、ハッピーエンドの必要など敢えてないと思えたからだ。

絶望的な状況においては、みな自分の事で精一杯になり、人間の本性は剥き出しになる。綺麗事もない、心の余裕もない、増して誰も面倒など見てくれない。
戦争は人を変える…そうゆう世界だと真剣に語りかけてくる作品だと心から感じた。

サクマのドロップや蛍を見ただけでも思い出してしまう、強烈なメッセージ性を持つ名作です。
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