クリント・イーストウッド監督の『硫黄島プロジェクト』1作目の、アメリカ側視点から硫黄島の戦いを描いた戦争ヒューマンドラマ。
とはいえ、対をなす2作目の『硫黄島からの手紙』とストーリーが重なってるわけじゃなくて(アメリカ軍の硫黄島上陸シーンのカットは同じものが使われてますが)、こちらはずっと戦場で戦うストーリーではなく、戦いに参戦した1人の兵士を通して、時系列をかなり組み替えて一枚の写真を巡る悲劇を描いています。
キービジュアルにもなってる、6人のアメリカ兵が硫黄島の摺鉢山に星条旗を立てるところを撮った写真。
1945年度ピューリッツァー賞受賞の、第二次世界大戦の中でも指折りの有名な写真。
奇跡的に完璧な美しい構図で撮れたこの一枚の写真は、アメリカ国内の厭戦ムードを吹き飛ばし、国民に希望を与えることになった。
政府や軍上層部はこの写真を戦意高揚と戦費調達のキャンペーンに使うため、星条旗を立てた6人を帰還させようと特定を進めるが、3人は既に戦死。
帰還して広告塔にされる、残り3人のそれぞれの想い。
その中の1人、主人公ドクの目の前で催される豪華なイベントやパーティーでの出来事と、戦場の凄惨な記憶との交錯。
打ち上げられる花火は爆撃の音。
ストロベリーソースは兵士の鮮血…。
誰がいたかとかみんなよく覚えてない中、最初に掲げた旗を取り替えて立て直した時に撮った旗の写真に写ったから「英雄」?
戦場で味わった恐怖や絶望、写真の真実からくる罪悪感や良心の呵責に苛まれ、傷ついていく心。
他の2人、利用されるのに耐えきれないアイラに、逆に利用されたことを利用しようとするレイニーにも深く考えさせられました。
原作で、ネイティブアメリカンで参戦したアイラのバックボーンや、戦死した3人、旗を掲げた時の詳しい流れも読んで知ってたので余計に胸が締め付けられました。。。
戦場に行って命は助かっても、「無事」に帰って来れる人なんていない。
ちなみに、この写真と「英雄」たちのキャンペーンで、戦争のための国債売り上げは目標額の2倍を達成し、財政難を切り抜けたとのこと。
切手や記念碑として巨大な銅像にもなっているけれど、この写真が伝えるのは、結局は単なる輝かしい勝利の栄光ではなく、戦争がもたらす暗澹たる残酷な悲劇を忘れてはならないという戒めだと思いました。
★1945年2月。アメリカ軍はすぐに攻略出来ると踏んでいた硫黄島。
しかし、旧日本軍は驚異の防戦を繰り広げ、第二次世界大戦でも屈指の大激戦となる。
甚大な死傷者を出しながら制圧した摺鉢山に星条旗が掲げられた。
しかし、別の星条旗と取り替えることになり、その場にいた何人かの中の6人が立てかけ直したところを、帯同してた報道カメラマンがシャッターを切った。
長引く戦争に疲弊したアメリカ国民だったが、新聞に掲載されたこの迫力ある美しい勝利を象徴した写真に高揚する。
政府や軍上層部は旗を掲げる6人の兵士を「英雄」として、国民の士気をあげ、苦しくなっていた財政難を打開するため広告塔として利用することに。
旗を掲げたとされる生存していた3人の兵士はアメリカに帰還し、キャンペーンに参加させられていくが、、。
ちなみに、2016年実は主人公のドクは写真に写ってなくて、別人だったということが判明!
(原作を書いた彼の息子は、父の死後硫黄島の旗を立てた一員だったことを独自に調べて知ったため、父から硫黄島のことを聞いたことは全くなかった。
ただ、関わっていたのは認められていて、それが1枚目の旗だったのか、2枚目の旗の補助役だったのかは結局不明。)
その事実も込みで鑑賞し、真実は生涯語ることが出来ないほど、もっと複雑で悲惨なんだと改めて戦争の恐ろしさを痛感しました。。。