torakoa

シルヴィアのtorakoaのレビュー・感想・評価

シルヴィア(2003年製作の映画)
3.0
詩人同士結婚し、世に認められつつある夫と、書けなくなり病んでいく妻の話。
実話ベースだそうで。
ジャケットのイメージで観ると面食らうと思う。ジャケット詐欺な気がする。

何だか薄気味悪さすら感じる暗い家、「ここでは(詩を)書けない」と言う夫、詩が書けない妻。そういう演出なんだろうなあと思った。画面の暗さ、微かに鳴り続ける風の音等、どこかに不穏なものがあり終始どんより淀んだ印象がある。

色々と書けない理由を挙げるが、幸福そうなバカンス(ハネムーン?)中も書けずにいた妻が、家事をしなければ、仕事をしなければ、時間さえあれば書けるのかといえば否であろう。彼女の紡ぎ出す言葉は多忙の中からも多分幸せの中からも溢れて来ない。死を身近に感じることで溢れ出すのだろう。序盤でそれを匂わせる演出してたように思う。

詩人として夫に嫉妬し、夫周辺の女性に嫉妬し。心穏やかにいられる時はなかったのかもしれない。
後でWikipedia見たら劇中で描かれる内容よりだいぶ壮絶だったのだが、夫を悪く描こうとはしてない感じはフェアだったかもなー。家事をするよりも執筆してくれたほうが嬉しいと言っていたのが印象に残り、妻が主婦に収まることを望んでいた訳ではない夫が、私は生活で忙しいのにと妻から詰られるのは理不尽で、彼がそうなったのは家の息苦しさもあったのではないのかと思わせるあたりとか。一方に肩入れしたりシンプルな善悪で描こうとしたりしてなかったと思う。
ダニエル・クレイグの、心情が垣間見えるような言外の表現も素晴らしかった。ほんにいい俳優だなー。

芸術家、クリエイターの苦悩も感じられる。主人公は書こうとして書けるタイプではなく、降りてこないと書けないタイプなんだろう。💡←こういう感じになった時以外は無理なのかもしれない。
一定以上のレベルのものを期日までに仕上げるクリエイターの方々は本当に凄いよなあと改めて思った。私は何も生み出さず享受するだけだから。

吹替入り、英語字幕なし。レンタルDVDにインタ収録。メイキングもちょこっと。



ネタバレになるかもしれないが


どんよりしたものに引っ張られかねないので希死念慮のある人はやめといたほうがいいと思う。
torakoa

torakoa