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晩菊のBATIのレビュー・感想・評価

晩菊(1954年製作の映画)
4.2
戦後を雑草のごとく生き抜こうとしている中年女性たち。そこに擦り寄る金を無心しようとする男たちの「女は楽でいいね。」の度し難き慇懃無礼さ。連帯という言葉も価値観もないままそれぞれの人生を笑い飛ばしながら生きる女たち。泥水も雨も飲み干せねば生きてはいけんよ、ねぇ?

これは林芙美子原作で、「めし」、「浮雲」もそうなんですね。どれも成瀬巳喜男の代表作だ。女性作家の原作とはいえ、成瀬がなんで戦後のフェミニズムなんてがいねんもなかったであろう頃にこんなに女性視点の話を撮れるのかと驚嘆してしまう。

それはこの作品で鮮明に描かれる男たちの卑しさから出発しているのかもしれない。会話の始まりは常に金の話が端々で出てくるけど、それは戦後復興機はどこでもそうであったろうし、金を回そうとする女たちと、手が回らなくなってすり寄る男たちとの対比が見事。

あの息子(澤村宗之助)が「一万円もらったんだ。だからママにあげるよ。」も、こいつはいつかその一万円を誰かに無心するのだろうなと感じたのは私だけだろうか。
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