あーさん

キャバレーのあーさんのレビュー・感想・評価

キャバレー(1972年製作の映画)
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ミュージカル映画強化月間 第2弾 Vol.2

"ニューヨーク・ニューヨーク"でその歌の実力に改めて感動したライザ・ミネリ。
彼女と言えば、今作が最も有名な代表作!(1973年 アカデミー賞主演女優賞受賞)
"シカゴ"や"バーレスク"なんかはこの流れではないかな。
観たような気もするけれど、昔観たものは
ちゃんと記憶していないものもあるので、、
ともあれ、再?鑑賞 ♪


これは大人の味わい。。
元来元気になれる明るく楽しいミュージカルが好みなのだけれど、こちらはダークでシニカル、うんと風刺が効いているのにロマンティックでドラマティック、、
予想外に色々な角度から心が揺さぶられるとても素晴らしい作品だった!!


1931年、ベルリン。
ロンドンからやって来た語学生のブライアン(マイケル・ヨーク)。この素朴で誠実そうな青年がまた良い。
学生なのでなるべく安いアパートを探していたのだが、そこで偶然アメリカ人のサリー(ライザ・ミネリ)と出会う。サリーは女優になることを夢見ながら、夜キット・カット・クラブというキャバレーでダンサー&シンガーとして働いていた。大袈裟なアイメイク、大造りでコケティッシュな顔は一度見たら忘れられない。苦手という人もいるけど、私は可愛らしさとセクシーさを兼ね備えた彼女が好き ♪

少しずつ距離を縮め、二人は孤独な心を温め合う仲になるが、お金持ちで遊び人の男爵マックス(ヘルムート・グリーム)と出会ってから運命の歯車がおかしくなっていくのだった、、

年表を紐解くと1933年 ヒトラー内閣成立とあり、今作にはそういう時代背景が思いきり反映されている。

キャバレーのMC役のジョエル・グレイがとても良い味を出していて(アカデミー賞助演男優賞受賞)、戦争前の不穏な時代の雰囲気を上手に演出、そして人間の欲望や汚い部分をグイグイとえぐってくる。

"Willcommen" オープニングはいかにも猥雑なキャバレーに誘われる感じ。
ここで一気にこの世界観に引き込まれる。

"Maybe This Time" ブライアンと結ばれた後サリーが歌う、幸せの絶頂の時の歌。
何を言っていても笑いが止まらなくなる。
ここで時が止まれば良いのに。。

そして、コミカルなショーの間にユダヤ人が嫌がらせをされたり、ボコボコにされたりする場面が映し出される。

"Money Money"はサリーとMCの二人で歌う掛け合いの楽しい歌。

"If You Could See Her"
ある動物がMCと一緒に出てくる。
ほっこり笑える場面も多いけれど、時に差し込まれる冷たい空気に観ている者は一瞬で凍りつく。。

ブライアンに英語を習いに来ていたフリッツ(フリッツ・ヴェッパー)と同じくユダヤ人のお金持ち令嬢ナタリア(マリサ・ベレンソン)の恋路もその時代に大きく翻弄され、、

サリーとブライアンはマックスと豪遊し、その後憑き物が落ちたかのように元の生活に戻るのだが、その後サリーは妊娠していることがわかる。
そして、"誰の子かわからない"状態に思い悩む。

今までの私なら、そこでこの展開がもう受け付けられなかっただろう。

でも、今回は違った。
共感できなくても、サリーの出した結論が正しいかどうかはわからないにせよ、自分のやったことの落とし前をちゃんとつけて前に歩いていく、彼女のその潔さに、私は涙した。。

ブライアンの優しさが哀しい。
どうして、どうして、、


でも、、
"Cabaret"
♪ Life is a cabaret, old chum.
Come to the cabaret.
吹っ切れたサリーが晴れやかに歌う歌は、自分自身を奮い立たせるかのように力強く、傷ついたことがある分だけ、いつまでも人々の心に残る。


そして、戦争がすぐ近くまで来ていることを暗示するラストシーンに身震いがするのだった。。



ボブ・フォッシーに心からブラボー!!と叫びたい!
あーさん

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