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普通の人々のodyssのレビュー・感想・評価

普通の人々(1980年製作の映画)
2.0
【アメリカ中産階級の病い】

BS録画にて。
レッドフォードが監督を務めた第一作ということでわりに有名な映画ですが、ようやく見てみました。

率直な印象としては、退屈でした。
中産階級の一家がいて、最初に次男が登場。彼が自殺未遂でしばらく入院していたことがだんだんに分かってきます。
さらに彼の兄がヨット事故で死んでいることも。
夫婦の関係も、目立って険悪ということはないけれど、どこかしっくりしていない。

一家の父親は次男を初め各方面に気を遣い、次男にサイコロジストのセラピーを受けるよう勧める。
この辺、いかにもこの時代(1980年)のアメリカ中産階級らしいなと思いました。

作中でも言われていますが、私は日本人であるせいか、サイコロジストのセラピーというものを信用していません。でもこの映画では一定の役割を果たしているんですよね。いかにもアメリカらしい。信じるものは救われる、信心対象が神でも心理学でも。

それに1時間50ドルの診察料は決して安くない。それも1週間に2度だから、毎週100ドルです。でも、その出費はこの一家にとっては何でもないことなのですよね。

作中には株の話も出ては来ますが、この一家に経済的な悩みはありません。夫の仕事もそんなに忙しそうではない。家も広壮で、アメリカ中産階級からすれば普通かも知れませんが、日本人が見れば立派な上流階級の邸宅です。

意地の悪い言い方をすれば、お金と暇があるから悩むんじゃないの? 貧乏人には悩んでいる暇なんてないのだよ、と言いたくなる。長男の死もヨット事故によるもので、そもそも日本人ならヨットを趣味にするなんてのはお金持ちと相場が決まっています。

ラストにも首をひねりました。だいたい、夫婦が完全に理解し合うなんてことはあまりないわけで、お互いの欠点を承知しながら片目をつぶってやりすごす、というのが普通の夫婦関係ではないか。妻とは完全な愛に至らないからと言って別れ、それでいて次男と抱き合うのは、どこか変です。

男同士の絆を強調するのがアメリカ映画の伝統だとすれば、この映画も伝統の枠を越えることはなかったと言えるでしょう。

なお、後半で次男のガールフレンドになるジェニーン役で出ているエリザベス・マクガヴァンがチャーミングでした。
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