スーパーエイプマン

狐のくれた赤ん坊のスーパーエイプマンのレビュー・感想・評価

狐のくれた赤ん坊(1971年製作の映画)
4.0
リメイクに異様な執着を燃やす(?)三隅研次、71年大映末期の作品。
絢爛、贅沢とはとても言えないセットからはなるほど予算の不足が伺える。とはいえ例えば川越人足の寅八(勝新太郎)の本業である川越えシーンの画面いっぱいにひしめき合う男たちの脚であったり、あるいは彼らが酒場で巻き起こす派手な喧嘩など、子連れ狼シリーズ以降のダイナミックなカット割りと相まって、騒々しくも力強い画面を展開していく。同時に、子どものため禁酒を誓う寅八がおとき(大谷直子)に酒を勧められるシーンの奥行きや、質屋の主人(藤原釜足)に説得された寅八が野へと駆け出した先でのシルエットとして描かれる樹木は、少ない予算の中で工夫を凝らして人物の両義性を一発で書き出すことに成功している。
感情がはっきりと場面ごとに書き分けられた脚本と演出との噛み合わせも良く、娯楽作として何の不足もない出来。周到な繰り返しによって、押し付けがましくない形で救いを用意するラストも素晴らしい。個人的には『無法松の一生』と並んで三隅勝新コンビの傑作だと思う。