Jeffrey

私は二歳のJeffreyのレビュー・感想・評価

私は二歳(1962年製作の映画)
3.5
「私は二歳」

冒頭、都営団地のサラリーマン夫婦。赤ん坊が産まれた。名前は太郎と言う。男の子の笑顔、泣き顔、悪戯。ある日動物園へ。 落下、成長、子育てに悪戦苦闘、姑問題勃発、アニメーション。今、 〇歳から二歳になるまでの日々を描く…本作は市川崑が昭和三十七年に大映で監督したカラーフィルムで、この度DVDボックスを購入して久々に鑑賞したが面白い。本作はキネマベスト第ー位に輝いた映画で、松田道雄の育児書を和田夏十が脚色した子育てを通じて生命の大切さを時には赤ちゃん目線で、赤子の本音を織り交ぜ、夫婦の視点で右往左往する日常を捉えた作品。本作は子供が鑑賞したら自分の親がどれほど苦労して世話してくれているかと言うのを感謝できる映画ではないかと勝手ながらに思う。市川らしさが詰まった作品でもあり、素朴な願いを込めた映画である。


さて、物語は都内の団地に住むサラリーマン夫婦の五郎と千代の間に一人息子が生まれた。子供の名前は太郎。一家は新たにおばあさんを迎えるが、太郎の病気、怪我、いたずらに振り回され、てんやわんやの毎日を送り始めていく…と簡単に説明するとこんな感じで、今も昔も変わらない親の心と子供の気持ちを見事に捉えた秀作で、今の世の中、少子化問題に悩まされ、子供を持とうとしない若者が多くなったが、この作品は子供のいない人が鑑賞すると自分たちも子供が欲しいと思ったり、子供のある人が見たらもう少し真剣に子供のことを考えてやらなくちゃと反省してしまうような作風になっている。現に脚本を担当した市川崑の妻である和田さんもそうプレスシートに言っていた。

本作は冒頭に赤ちゃんの声で、この物語の説明がなされて独白するファースト・ショットで始まる。うっすらと母親の顔が現れる。この主人公である赤ちゃんどこで見つけてきたかルートはわからないが、非常に赤ちゃんらしく可愛らしい。多分オーディションだろうけど。特に歯を見せながら笑顔で笑う表情はたまらない。途中で赤ちゃんベットルームから抜け出そうとするシーンがあるのだが、思いっきり人形で笑える。そして犬に指を噛まれる演出でガチ泣きするのも可愛い。その事件から夫婦が口論し始めるのも非常にリアル。だけど動物園に行くきっかけにもなる。するとカットは動物園になり、様々な動物をカット割りしていく。そんで早速子供が迷子になってしまって、夫婦が狼狽しながら探し始める。

そんで様々な子供が泣いているシーンを捉えて子供たちの心の声がナレーションとして聞かされる。そんで夫婦がまた喧嘩し始める。だけど夫が謝って解決。そんで猿を見ながら笑う赤ちゃん。徐々に夫婦たちに笑顔が戻ってくる。しかし夜中に赤ちゃんが泣いてしまい夫婦が起こされあやしてる最中にまた口論になっていく。だが牛乳を飲ましたことにより泣き止んで万事解決すると思いきや、また泣き出してしまう。すると子供の心の声が聞こえ始めて、昼に寝たから僕は眠くないんだ、僕は遊んで欲しいんだと言う始末…。そしたらベランダから赤ちゃんが落下してしまうのを牛乳配達の人がキャッチすると言う事件も起こる。ここで託児所の問題や貧困層が託児所や保育園に子供を預けられないと言う問題提起を挟み込んでいる。

そんでお姉さんとのいざこざも描いている。わざわざ田舎から東京までやってきて冷蔵庫などを購入したいが五千円足らないので貸して欲しいと言うが当時の五千円と言えば相当な大金で、余分に払えるお金がないと断ると不仲になってしまうようで、帰ってしまう。そんで今度は姑のいざこざに移り変わるのだが、ネタバレになるため深く言及しないが姑の物語は結構感動的である。この作品予告もー本の映画のように編集されていて個人的にはすごく好きだ。当時は大映スコープと大々的に宣伝されていたが、市川崑はあえて昔の手法でこの作品をとっている。この作品のポイントと言うのは二歳である。その年頃の親になってみて様々な問題や苦しみ、喜び、楽しさを描いている。これは監督と脚本家の夫婦が語る子育て映画である。最後にこの作品は森永牛乳と協力したらしくその牛乳が結構場面に出てきた。
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