柏エシディシ

エル・スールの柏エシディシのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
4.0
エリセ31年ぶりの新作に向けて予習復習。
以前は、なんだかわからないな、「ミツバチのささやき」の方が好きだな、なーんて思っていたのだが、あらためて、こんな終わり方だっけ?すごい!ってなった。
ビクトルエリセは「記憶」の映画作家なんだな、と。
内戦の記憶も生々しい1950年代スペインの少女の回想形式のこの映画。
不思議と自分自身の個人的な幼少期の思い出や両親との事を重ねながら観てしまう。
きっと観る人皆がそうなってしまう。
名画の魅力で魔力。
そして、エリセの映画はいつもミステリーでサスペンスでもある、という。
冒頭の窓辺のわずかな光から浮かび上がってくる人物のショットからはじまり、全編映像の美しさも心に残る。
タイトルであるEl Sure(南)を映さずに終わる衝撃。謎は謎のまま。
これはこれで完璧な終わり方だと思うけれど、実は資金面の問題で物語の後半は作られなかっただけ、というのが映画の奇跡というか巡り合わせを思う。
もし"南"の物語が撮られていたら、本作は今の様な傑作の評価を得ていただろうか。
エリセはこれほどまでに寡作の映画作家になることも無かっただろうか。
考えてしまう。
柏エシディシ

柏エシディシ