次男

ゾディアックの次男のレビュー・感想・評価

ゾディアック(2006年製作の映画)
3.8
1960年代後半、カリフォルニア州サンフランシスコで連続殺人事件が起きた。その猟奇的な手口、そして地元新聞社に送りつけた犯行声明文から、アメリカを震撼させる事件となった。犯人は「ゾディアック」と名乗る。
新聞記者のポール・エイヴリー、警察の捜査官デイヴィッド・トスキ、新聞社の漫画家ロバート・グレイスミスの三人は、それぞれのやり方で犯人を追うのだった…。

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事件のあらましを知っていたら、違った見方になっていたのかもしれない。

見終わったあとに、というより事件が一回落ち着きかけたときにやっと、自分の見方が少しもったいないことに気づいた。これは「ゾディアック事件の真相を暴く映画」ってだけじゃなくて、「その事件に情熱を傾けた男の映画」だったんかもなあ。気づくのが遅かった。(肯定的な言い方をすれば)自らの好奇心と正義に正直に進み多少の犠牲をもいとわない、しかし事件を追うために道を逸れていく、狂っていくようにも思える男たちの姿は、描かれている事件と共にショッキングで、しかしある種の憧憬すら覚える。

未解決の事件且つこの映画も大いなる仮説でしかないという前提であり、その条件の中で事件の動向と(この映画の中での)解決への足跡を丁寧に描いている本作は、このようなレベルで成り立っている時点で称賛に値するだろう。メインに据える追う男たちの視点を効果的にスイッチしていく展開や、ラストシーンの出来なんかは本当に嘆息ものですらある。

ただ、個人的な嗜好としては、もう少しわかりやすい構成にしてもよかったんじゃないのかと思う。3人が代わる代わる追っていく構成をもっと減り張り効かせたり。なんせややこしい事件で容疑者も登場人物も多いものだから。殺人シーンの無茶苦茶に恐ろしい演出はさすがフィンチャー監督とも言うべきだから、(敢えて淡々と描いたのだとは思うが)もっと派手にわかりやすくやってほしかったなぁ。この監督様なら浅くも低俗にもならないと思う。


(2010年の感想。渋くてついていけなかったのかしらん)
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