Fitzcarraldo

A.I.のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

A.I.(2001年製作の映画)
1.5
ディスレクシアの診断を受けたことを告白し、読字障害のため学校卒業が2年遅れ、いじめ体験や学校に行くことが苦痛だったと語り、現在でも脚本などを読むのは人の2倍の時間を要するという世界最高のヒットメーカーであるSteven Spielberg脚本監督作。

1969年に”Harper's BAZAAR“で最初に公開され、後にアンソロジー化されたBrian Aldiss著の"Super-Toys Last All Summer Long."を、Stanley Kubrickが1970年代から映画化の企画を持っていて、1982年に正式に映画化権を原作者から取得した。

因みに”Harper's BAZAAR“は1867年にニューヨークで創刊した世界最古の女性向けファッション雑誌。以来32カ国で発行される世界有数のファッション誌。

その後10年かけて脚本に取り組み、キューブリック自らテスト撮影を行ったらしいのだが、そこで話は頓挫。子供の成長は早いので撮影に時間をかけられないというのがネックだったのか?撮影中に急激に背が伸びたりしたら台無しだもの…遅撮りのキューブリックには懸念材料でしかない。

スピルバーグとキューブリックの遺族の話だと、キューブリックは元々監督をスピルバーグに任せるつもりで、自身は製作に回る予定だったとのこと。

しかし、その時スピルバーグは断っており、キューブリック自身が監督することになっていたんだとか…。

キューブリックの死後、企画が白紙になりかけたが、遺族の強い希望でスピルバーグが製作を引き継ぎ、監督だけでなく自ら脚本を執筆することになるも、キューブリックの原案を変えたくなかったために遺志を尊重したというが…。



冒頭ナレーション
「地球の温暖化で局地の氷山は溶け果て、海は水を上げて海面上の都市を飲み込んだ。アムステルダム、ベニス、ニューヨーク…すべて沈んだ。さまよう数千万の人々。激しい気性の変化。貧しい国々を襲った深刻な飢餓。その中で繁栄を保った先進国の政府は妊娠に許可制度を設けた。従って一度作れば腹も減らさず資源を消費しないロボットが、社会経済を成り立たせるために不可欠となった」

この字幕よ日本語がおかしいと思うのは自分だけか?
前半は、まさにいま起こるべし危機感として世界中で訴えられている。まさに現実に起こりそうな気配を肌で感じる。
問題は「妊娠に許可制度を設けた。従って」ん?従って?したがって?はぁ?おかしくないか?妊娠の許可制度というのも、ここでは何の意味を成しているのか?どんな制度なのかも何の説明もないのに、その言葉のあとに「従って」…従って?従って?え?意味分からないけど…

英語がわかれば、自分でリスニングすれば間違いを直せるけど…ちと早すぎてわからない。
オリジナルの英語の時点で、おかしいのかもしれないし、単に字幕担当のミスなだけかもしれないし、気になってるのは私だけかもしれないが…

あっ…字幕…戸田奈津子だった…。
チ~ン。

それにしても、これは戸田女史だけの責任とも思えない。本編を進んでいっても、この妊娠許可制度がどういうものかの説明が一切されない。というか冒頭のナレーションでしか登場しなかったんじゃないかな?…一切それについて言及しないなら、妊娠許可制度という単語を冒頭で出す必要なかった。

なぜ使った?要らんだろ?

妊娠許可制度がどういうものかワカラナイ状態であれば、「従って」の後の部分も???状態。

妊娠をする際の子づくり段階で許可が必要なのか?
はたまた妊娠をしたら許可を申請するのか?
その許可は簡単に取得できるのか?できないのか?高額な申請費用が取られるのか?必須条件があるのか?一人目は簡単だが、二人目から厳しくなるのか?それとも三人目から?
この許可制度に格差や差別が混在しているのか?

こういうことが整理されて、「従って」云々…という文が成立するのでは?

この制度のこともワカラナイのに「従って」で接続しても成立しない。

この妊娠許可制度の方が気になって、話が入ってこないんですけど…これで一本映画作れそうだけど…



パソコンに話しかける様は、完全に実現してるね。Siriじゃん。


人間と見分けがつかない程の人造人間を作る技術をもった進んだ世界なのに、いまだに誓約書は紙媒体だし、そこにサインって…ここは全く進んでない。何か次の一手を考えてほしかった。

ハンコ文化が根強い今の日本みたい。コロナ禍で少しは改善に向かっているようだが…どうなるんだろう?


急に質素と云うか地味と云うか…温暖化で海面が上がるという地球規模の話から始まったのに、何分もしない間に、急にいち家族の話へと世界が矮小化されてしまった。

焦点を絞るためには致し方ないのかもしれないが…世界観が途端に狭く、ほぼ家の中しか出てこないので…もう少し外堀を埋めてからでもよかった。まだこの時代の設定なり背景、どれくらい進んた世界なのかが見えにくい。

他の家族も映らないし、この時代の社会通念や人々の暮らしも全く見えない。この家族しか存在してないような見せ方は失敗だと思う。

妊娠許可制度のことも分からないし、この世界、この社会のことも分からない。

すぐ母と子のことだけに焦点を絞り過ぎたことが要因であろう。


そして…代理子供ロボなんか必要ない!即刻、返却して!と強く訴えてた母親が、たかだか1日で絆されてしまう。特に心変わりしたきっかけとか、逡巡する様子とかないんだよね…嫌がって嫌がって、クローゼットに押し込んだりしてたのに、夜にはもうロボを寝かしつけてるし…

え…と、その変化は何がキッカケだったんでしょう?あんなに嫌がって泣き叫んでたのに…繋がらないよ。

旦那も旦那で、何も言わずに当たり前のように食卓に座って夜ご飯食べてるし…いや、あのさ。お前は昨晩、明朝には引き取ってもらうと妻に約束してたやん。

いざ明朝になったら、旦那の姿ないし…え?なんでいないの?旦那はいないのにロボはいるという。なんで?

で、夜ご飯の時には帰ってきて、そのことには一切触れないし。え?なんで?馬鹿なの?この旦那の方がロボットに見えるんだけど…そういうドンデン返し?それなら納得できるよ!

「明朝って約束だったのに、引き取れなくてゴメンね。今日一日どうだった?」

「明日には引き取れるけど、どうする?もう1日、一緒に過ごしてみる?」

ちょっとありきたりで安っぽいけど、こんな台詞が旦那には必要なんじゃないの?あまりにも身勝手に見えるし、母親の心変わりした瞬間は見えないし。何を目指しているのか、ナニヲ見せたいのか散漫でバラバラな印象を受ける。


○部屋
子供ロボットへ、親を愛するための変更不能プログラムをインプットする母。

え?もう?時の移ろいは早いですが、これはいくらなんでも早すぎないか?暴挙にしか見えないけど…

映画の時間としては、ものの5分くらい前には、泣き叫んで子どもロボットは認めない!返却して!って云ってたけど…もう書き換え不能のプログラムをセットするんですか?全く理解できん。見せ方が下手くそ過ぎて、そうしちゃうよね?という共感を全く生まない。逆にこの母に対しての嫌悪感しかない。

雑やねん!進行が…インディ・ジョーンズもディテールがホントに雑だからね…やはりスピルバーグのこういうところが好きになれない。

キューブリックなら…こんなことに絶対にならなかったと思う。

正直…ここで見るのやめても問題ない気がする。

結果、ここでヤメとけば良かった。
時間の無駄だった。


○部屋
なんと寝たきりだった実の息子マーティンが復活!下半身が不自由そうだが、元気そうである。

ここで驚いたのは子ども代用ロボットであるデイビッドの顔である。人造人間メカなんだから当然に実の息子マーティンと同じ顔で造ったものだと思っていたら…

まさか?!全く違う顔じゃないか!!!嘘だろ?
息子と同じ顔をしてるから、メカでもいい!このメカ息子に愛してるママ!と言われたい!だからインプットさせたんちゃうの?!いや、そうであってくれよ!

今まで、息子とも全く違う、どこの誰だか見知らぬメカ子供にママ愛してると普通に言わせてたのかよ?その方が鬼畜じゃねぇ?何の思い入れもない顔だよ?しかもメカだよ?おい嘘だろ?
この母ちゃん怖ぇんだけど…それで癒やされてたわけ?そういうことじゃないと思うんだけど…

なぜ同じ顔で造らなかったの?せめて息子と同じ顔にするだろ?それじゃないと意味なくねぇか?見た目は人間と遜色なく造れるんだから、同じ顔でいけや!アホちゃうの?同じ顔で、ようやく成立する話じゃないの?息子と同じ顔だから感情移入してくるんじゃないの?見知らぬ顔なら要らないだろ?しかもメカだし…

え?なにしてんだよ?プロデューサー陣も誰も異を唱えなかったのか?そんなことあるか?ここに引っかかってんのは自分だけなのか?肝だと思うんだけどなぁ…

初めて家にデイビッドが代用ロボットとして来た晩だったかな?マーティンの写真を見てるシーンがあったけど…確かに、この時にアレ?顔違くないか?と思ったけど…この写真から何年か冷凍状態だから、そこから成長分を足したのかな?くらいにしか思ってなかったのだが…

完全に違う顔の二人が部屋で遊ぶシーンを見て…あんぐりしてしまった。

もう、ここでやめたい。
見る価値あるかな…

後記。
なかった。ここでやめればよかった。


○湖畔
ボートの上でマーティンとデイビッドにピノキオの読み聞かせをする母。

ここでピノキオというのも…なんだかなぁ。それは狙いすぎじゃねぇ?あざとすぎて何が悪いの?と云われそう。


○森
デイビッドを置き去りにする母。
中途半端な愛情めいた情けなんか必要ないのでは?廃棄されるのは嫌だ。かといって家にいられるのも嫌だ。だから、森の中に置き去りにする。

どえらい人間だな…そもそも最初から、この母親には感情移入してないから別に何とも思わないのだが、森の中で、泣きながらデイビッドに言い聞かせてるのとか見てられないんですけど…

そもそも、あなたが無責任にプログラミングしたのも何でかなぁ…と思ってんのに、今度はそれを捨てる?なんなんだろ?この人の心の移ろいや、感情の流れを理解するのは国立大学に入るくらいに難しい。


○森(夜)
メカの廃品回収フェア。
月のバルーンみたいなものから、司令部のようになっていて、メカを捕まえる。

そのボスがバルーンからトラメガで逃げ回るメカに声を掛ける。トラメガ…この映画の世界が、どれくらい進んでるのか知らんけど、トラメガは全く進化してないんだね?カタチから機能から今と何ら変化ないんだけど…この辺のディテールですよ。なんか遊びなさいよ!黒く塗っただけやん…

まぁ誰もトラメガを進化させようとは思わないわな…ひょっとすると、50年後も今と全く変わらずにトラメガは現役でいるかもしれない。

そう考えるとトラメガってスゴイ発明だったんだな…


森の中のメカを追っかけるバイクたちが登場。
仮面ライダーアマゾンのような改造バイクで、キラキラ光るボディスーツを着てる。これなに?
全く未来感ないよ。むしろ古ささえ感じてしまう。


○ライブ会場
メカを廃棄するショーが行われている。
バラバラになったり、溶けたりして、喜んでるリアルな人間たちが、デイビッドが出てきたら、彼は子どもだ!と急に手のひらを返して、主催者に石を投げたりして襲いかかる。

いやいやいや…

トランプの集会に来てるトランプ支持者が”Make America Great Again”と大合唱してたのに、急にバイデン政権を支持するようなもんじゃね?

いまだに7300万人のトランプ支持者がいるんだから、一度信じてしまうと、そんな途端に考えを変えることなんかできない。

散々、メカを壊して盛り上がってた人間が、なぜ主催者に歯向かうのか?そんなわけねぇだろ?!

子どもをダシに使うズルさも辟易する。
こういうところで盛り上がってる人種は、メカの子どもが出てきたら、逆に盛り上がるんじゃねぇの?

反対派がいたとしても、せめて半々とか、少数派にしてくれよ。会場全体で子どもの味方って…阿呆らしい…。


ジュード・ロウの演じたセックスロボットのジョーのロボット加減が素晴らしい。実写版ウッディいけるんじゃねぇか?綺麗に揃えられた生え際も頬骨が出てるのもウッディっぽい。


○マンハッタン
製作者の教授の元へ辿り着くデイビッド。
しかし高層ビルから飛び降りるデイビッド。

なんだか、よく分からない。
ナリで飛び込ませているようにしか見えない。ブルー・フェアリーに会って自分は人間になるんだと、誓ってたデイビッドが呆気なく飛び降りるかな?なんで急にネガティブになった?よく分からない。

海水に浸かったマンハッタン。
デイビッドが飛び込んだら、途端に魚群に運ばれてブルー・フェアリーの目の前まで?
そこでジョーに助けられるのだが…

海面に出ると、今度は上空からヘリが飛んできて、強力磁石のようなもので、吸い上げられる。
ここでジョーだけに反応するのはなぜ?どういう原理で引っ張ってんの?

デイビッドには一切反応しない!
ジョーのペンダントがグイッと引っ張っられてジョーも足から引っ張っられてるのに…それ以外のモノには一切反応しない!なんで?

メカにだけ反応するなら、デイビッドもメカやん!よくわからん。都合良すぎる。整合性をしっかり取ってほしい。

さらにマンハッタンまで乗ってきたヘリは、水陸両用で潜水まで出来るという都合の良さ。


○海底に沈む遊園地
ピノキオのアトラクション。
その中にブルー・フェアリーの像が…
そこに向かって祈り続けるデイビッド。

観覧車が倒れてきて、閉じ込められる。

もう…ここで終わっていいのに…

性懲りもなく2000年後だとさ…

スピルバーグ
「スタンリーの草案では2000年後の世界を描く展開も用意されていたため、あのシーンこそ私が映像化しなければならなかった」

だとさ…
なんか、うまいだろ?的な感じが鼻につく。
全然うまないからな!
Fitzcarraldo

Fitzcarraldo