むっしゅたいやき

ここに幸ありのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

ここに幸あり(2006年製作の映画)
3.3
悠々自適、ノンシャラン。
オタール・イオセリアーニ。
原題は『Jardins en Automne(秋の庭園)』。
-邦題は、どうにかならないのか。

自らの境遇を嘆かず、その中で如何に楽しめるかを模索しつつ暮らす主人公をユーモラスに描いた作品である。

個人的にテーマや映像の良さよりも、間延びした展開や焦点のぼやけたテーマ、起伏が少なく退屈なストーリーと言った短所が目につく作品である。

イオセリアーニの作品には、作中人物の情念が見られない。
客観視、と言えば聞こえは好いが、感情移入がし辛く、此方も覚めた目で見る分より強く作為性を感じる事となる。
主人公がコモディティ化された結果、怒りも悲しみも一過性のものとしてデフォルメされて薄っぺらく見えてしまうのである。
本作は当にその短所が前面に出てしまった様に見受けられる。
度重なる逆境を悲壮感も無く余裕綽々と受け入れて行く主人公・ヴァンサンに全くリアリティが感じられず、何処か此岸では無く“彼岸に住む人”の様に感じられるのである。

ノンシャランの語意は、物事を等閑視する事とは明確に異なる。
ヴァンサンの女性遍歴も踏まえ、そう言う点で私には何とも尻の据わりの悪い、居心地の悪い気分になる作品であった。
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