デニロ

誘惑のデニロのレビュー・感想・評価

誘惑(1957年製作の映画)
4.0
1957年製作公開。原作伊藤整。脚色大橋参吉 。監督中平康 。

中平康監督作品の最高傑作云々とチラシに記載してあったので、またエロチシズム満開の題名にも誘われて出掛ける。中平監督の先進的な作風と清潔な芦川いづみのエロス。原作は伊藤整だし、期待もマックス。

茫洋とした父千田是也とちゃきちゃきとした娘左幸子のすっとぼけた掛け合いで始まる。『アニー・ホール』の裏音声(心の声)はここから取ったんじゃないかというようなオシャレな脳内モノローグが大爆発。

千田是也に色目を使う轟夕起子の役柄があーしつこいな、と思いながらも軽演劇並みのくどいギャグや動作に、次に何をしてくれるのかと笑ってしまう。回想の中の千田是也の扮装とか、何で隣同士で座るんだという喫茶店や、長い廊下を泣き叫んでいく左幸子と高友子の姿、シラミ退治のDDTの使い方他にも笑いがこらえきれない場面が満載で、もはや肩のこりがほぐれます。

で、何が『誘惑』なんだ、エロなんだということを忘れた頃に芦川いづみが登場し、切ない恋心を成就させるのです。

神保町シアター「恋する女優 芦川いづみ」での一篇。
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