Toineの感想文

新宿マッドのToineの感想文のレビュー・感想・評価

新宿マッド(1970年製作の映画)
4.1
【60年代、大都会のアングラ】
評判通りの面白さ。
キーワードはフーテン。
映画公開時のタイトルは『新宿フーテン娘 乱交パーティー』でしたwww
凄まじくてわろた。
乱交って程のことはしてないし現在のタイトル『新宿マッド』の方が適していると思います。

フーテンと聞くと寅さんが頭に思い浮かびますがこちらの作品に出てくるフーテンは見た目がヒッピーみたいな若者たち。
働かずにお酒とシンナーとSEXに溺れてひたすらchillっているご様子。
今でいうトー横キッズみたいな感じなのかな?

冒頭でご子息の十朗さん(唐十郎さんから拝借した役名だそうです♡)が56されるシーンだけカラーでそこから先は全編モノクロ映画です。
センス抜群。
十朗さんを○害した際に流れた血液を隣に居た女性の体に塗りたくる猟奇性。
新宿マッドは変態確定。

当時の日本語の発音や言葉づかいが今と違うので日本語が不自由な私にとってはリスニングが難しかったです。
しかも言い回しが真面目すぎるし特にお父様の台詞が解説みたいなので一周回ってコメディになってるし。好き。

新宿マッドという人物に一人息子を56された父親が九州から上京し新宿の街で犯人を探し彷徨う復讐譚。
60年代の路地裏、飲み屋街、住宅地、沢山の場所をゲリラ撮影していた。
素晴らしい風景でした。
かなり貴重なフィルムだと思います。

結局、新宿マッドとは何者だったのか?
誰か1人を指す固有名詞ではなく、その時代に絶望した若者たちという概念なのかなと思いました。
昔の映画によくある説教臭さや拳で男同士の気持ちをぶつけ合うみたいな展開からの復讐に燃えていた筈のお父様が最後に虚無で終わるみたいな絶望や空虚感の漂うラストが好きです。

新宿マッドに翻弄されすっかり打ちひしがれてしまったお父様。
真面目な人生、真逆のフーテン達。
それぞれの生き方。考え方。育った環境。
結局どちらが正しくてどちらが間違っているかを一方的にジャッジすることは出来ない。

劇伴も素晴らしくて特にラストカットで流れたサイケデリックフォークみたいなギターの音色が最高に好みでした。
(サイケデリック・ロック大好き♡)