Mikiyoshi1986

書を捨てよ町へ出ようのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

書を捨てよ町へ出よう(1971年製作の映画)
3.7
5月4日は戦後日本のカウンターカルチャーに多大な影響を及ぼし、狂乱の時代を挑発し続けた異端児・寺山修司の没後34周年に当たります。
生きていれば今年で82歳のお年。

47年間という短い生涯の中で革新的な活動を次々に展開し、寺山はまさに"日本のゲンズブール"を体現した男というイメージが強いです。

元々タモリのモノマネで認知し、本格的に寺山に触れたのは多感な学生時代に読んだ彼の代表的著書「書を捨てよ、町へ出よう」。

でも当時は正直あらゆる引用を多用してしょうもない理屈をこねくり回す、時代遅れのとっぽいインテリ野郎という印象しか持てず、ハマることはありませんでした。
しかし彼の持ち味はなんと言っても時代の一歩も二歩も先を行くような豊かな発想力!想像力!

それを駆使して彼が初めて長編映画の監督に乗り出したのが映画版「書を捨てよ町へ出よう」。
ちなみに私が愛聴していた志人の1stソロAL「Heaven's 恋文」で本作がskitに使用されています。

映画版も学生時代に観たものの意味不明すぎて、三島由紀夫の「憂國」といい高学歴のインテリ作家が映画制作に手を出すとろくなもんにならねぇな!という感想を持ったものです。

とにかくアヴァンギルドに、革新的に、映像文法を破壊し再構築してゆく寺山のセンスは唯一無二。

まぁこんなものが時代を席巻して当時の若者を自堕落に走らせ、でも結局はバブルに浮かれてひたすら享楽に浸って、今の偉そうな団塊世代が作られたと云えばかなり語弊があるかと思いますが、
寺山の作品に触れると今のゆとり・さとり世代の若者の方が遥かにマシなんじゃない?なんて思ったりもします。
それでもひとつの時代を作り、あらゆる可能性を与えた彼の功績には平伏す以外にありません。

「何してんだよ。映画館の暗闇の中でそうやって腰掛けて待ってたって、何も始まらないよ?スクリーンの中はいつでも空っぽなんだよ」
ボロボロの映画館で観たい寺山の代表作です。
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986