さりさり

激突!のさりさりのレビュー・感想・評価

激突!(1971年製作の映画)
4.5
節目レビューなので、思い入れのある映画を再鑑賞しました。

いつだったかハッキリとは覚えていないのですが、多分、私が小学校の低学年の頃だったと思います。
お正月恒例の、親戚一同が集まった新年会での出来事です。
夜になるとおばあちゃんの家で酒盛りが始まりました。
私は酔っ払ったオジサンたちを見るのが好きな変な子供だったので、ワイワイと盛り上がっているオジサン連中の会話を聞きながら、口取りなんか食べてました。

宴もたけなわのその時、つけていたテレビで映画が流れ始めました。
赤い車に乗った男が、巨大タンクローリーに煽られながら、必死で逃げ回る洋画です。
すると、それまで大騒ぎしていた大人たちが、一人、また一人と、その洋画に注目し出したのです。
気がつくと、台所にいたオバサンたちもやって来ました。
その場にいた全員が、無言でテレビに集中しているのです。

時々「うわっ!」とか「おぉ〜!」とか声を上げながら、画面にクギづけになっている大人たちを見るのが可笑しくて、私は映画より皆んなの表情の方に注目していました。

やがて映画が終わると大人たちは一斉に話し出しました。
もちろん映画の話です。
どんな話をしていたのかは覚えてませんが、大人たちはあれやこれやといつまでも映画談義に花を咲かせていました。

帰り道「映画ってすごいな」って思いました。
あの酔っぱらいたちを黙らせ、一斉に映画の世界に引き込み、観終わったあとも更に盛り上げてくれる……何だかすごいものを見てしまったぞ!と、子供心にワクワクした感覚になったことをおぼろげに覚えています。
のちにその映画は『激突!』だと知った時、改めてスピルバーグの凄さを感じたものです。

本作は、私の一番古い記憶の映画です。
あの懐かしい日を思い出すと、胸の中が温かさでいっぱいになります。
今、節目レビューに、この映画を観ることが出来てとても嬉しい。

映画の力ってすごい。
バラバラだった心が、ひとつの映画で繋がることもあります。
有名作ではないけれど、それが生涯で一番大切な映画になることもあります。

映画を好きでいられて、本当に良かった。
これからも思い切り泣き笑いしながら、一作一作、大切に映画を観て行きたいと思います。
さりさり

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