たた

帰って来た木枯し紋次郎のたたのレビュー・感想・評価

帰って来た木枯し紋次郎(1993年製作の映画)
4.2
満足な食べ物もおぼつかない時代に、1日に70km歩くことも珍しくなかったという当時の渡世人、刃傷沙汰は日常的、まして無宿の流れ者となればいつ野垂れ死んでもおかしくない。
記録や統計に残ってなくても、彼らが短命であったことは想像に難くないわけです。

紋次郎本人もたびたび口にしている「渡世人にゃ明日という日はござんせん。今日がいつもおしめえの日だと思っておりやす」という台詞の通り。

そんな渡世人紋次郎が、運が良いのか悪いのか40や50まで生き永らえていたとしたら、どんな人生観のもとにどんな生き方をしてるんだろう?…というところから企画が立ち上がったと、誰かが言ってた記憶がありますが。

単に笹沢先生か市川監督が中村敦夫の紋次郎を最後にもう一度撮りたかっただけなんじゃないかとも思います。

なんと木こりとして真面目に働いてた紋次郎ですが、なんやかんやあってやっぱり渡世人の世界に「帰って来た」。
あっしには関わりのねえこってが信条ではありますが、義理堅く、恩義に厚く、情が捨てきれない紋次郎は、やっぱりいろんなことに巻き込まれちゃうんですね。

親分殺しの濡れ衣を着せられた紋次郎「あっしは世話んなったお人を斬ったりはしやせん」

真犯人の五郎蔵一味に取り囲まれた紋次郎「おっと、五郎蔵親分…大事なおふくろさんの喪も明けねえ内に、血の雨降らす気ぃですかい…」

中村敦夫紋次郎の発する台詞がいちいちかっこいいなあ。岸部一徳さんの、母親思いの冷血漢っていうあやしい五郎蔵親分もじわじわ染みる魅力。

結局、テレビシリーズの通りに、実は堅気として生きてく道もあるのかも…というほっそい選択肢が見えているのかいないのか、紋次郎は無宿渡世の道を行くのです。

おなじみのナレーションがちゃんと流れて大満足でした!(芥川さんじゃないのは残念ですが…)

「天涯孤独な紋次郎が何故、無宿渡世の世界に入ったかは、定かでない」
たた

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