AONI

赤西蠣太のAONIのネタバレレビュー・内容・結末

赤西蠣太(1936年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

なんじゃこりゃ!シーンによってコロコロ変わる作風。予想を裏切る展開。ラストは何故かほのぼのしたホームドラマ風に!伊丹万作の変化球演出に初めて球を受けた私は戸惑うばかり。

「口封じ」といった隠密のハードな仕事を描いたと思えば、会合場所の家や小船の上で隠密二人(千恵蔵&原健作)がワイワイ楽しそうにじゃれ合ってたりする。 蠣太(知恵蔵)からの手紙で刺客が潜り込んだことを知らされた役人が、部下に何度も何度も酒を薦めながら、その度に使いの仕事を頼みまくる漫才のようなやり取り。そんな脱線シーンにやたら時間を割いたのに、刺客の捕り物はあっさりと片付けちゃう。そんな意図的な「外し方」が終始続く。

歌舞伎囃子に乗って登場してくる標的(ターゲット)原田甲斐。このキャラが登場する空間だけは歌舞伎世界に突入する。彼の喋り口調や、クライマックスの見せ場である「刃傷沙汰シーン」もまんま歌舞伎である。 俯瞰カメラで捉えた群集の動かし方、襖が次から次と閉じられていく様。刃傷沙汰シーンの映像は大好きだ。

挙句の果てにこのラスト!小波を尋ねてきた蠣太。お座敷で再会する二人。「あんまり、ゆっくりしてられないのだが・・・」と繰り返す千恵蔵。周囲は次々消えていき、開き戸は閉じられ、二人を残して日は暮れる・・・。ほのぼのやの~。
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