ベビーパウダー山崎

冷たい水のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

冷たい水(1994年製作の映画)
3.0
中盤、DJ気取りでアサイヤス監修「Hits Now」みたいな格好つけた音楽が垂れ流され、行き場をなくした若者たちが下向きながら廃墟で蠢いている。ハサミで髪を切ったり、空き地を燃やしたり、窓を割ったり。精一杯、映画の真似事はしている。
『ディスオーダー』『冬の子供』を見てからだと、社会とそれなりに折り合いつけている大人への反撥、その子供っぽく面倒な衝動を芯としてアサイヤスが映画を撮っているのがよく分かる。
終盤の男女の逃避行は少女の全裸含めてATG的。物語(セリフ)でギチギチに縛らず、余白を音楽と雰囲気で埋めていく。怒りもしっかりあって、空気は厳しく、現実を突き放していくラストも間違っていない。だが、どこかそのポーズが、映画であろうとするその姿勢が俺を冷めさせる。作り手の感性と上手くいかない若者の日常が、ここまで収まりよく映画に映し出されて良いのかと難癖つけたくなる。結局は美しさしか描いていないのではないか、それはつまり『おんなの細道 濡れた海峡』の三上寛が圧倒的に足りないということ。