クシーくん

地球防衛軍のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

地球防衛軍(1957年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

日本特撮映画黎明期の代表的作品という事らしく、監督、特技監督は本多猪四郎&円谷英二の黄金コンビで、キャストは東宝特撮映画おなじみの佐原健二、平田昭彦、白川由美、志村喬、藤田進、土屋嘉男と勢揃い。

サムネになっているDVDのジャケットを見ると主役みたいな感じで描かれているから「そうかこいつらが地球防衛軍なのか。なんか戦隊ヒーローみたいなカラーリングと造形だな」と勝手に早合点していたのだが、こいつらが侵略者側だった…。
宇宙人ミステリアンの目的は地球を侵略する事と、地球人の女性との間に子孫を残す事。最初は半径3㎞以内の土地だけで良いなんて穏便な提案を持ちかけておいて、着々と地下に巨大基地を建造し、侵略の準備をしているのが敵性宇宙人ムーブしてて良い。
山火事や人工的に地盤地下や洪水を起こして、罪もない人間を虐殺している割には実際に会ってみると慇懃無礼ではあるものの、あくまで和平を望んでいるのだという物腰の低さが不気味。また、ミステリアンの主目的が子孫繁栄の為に女性を望む、というのが今まで観た宇宙人侵略映画になかったので却って新鮮。どういう基準で拉致しているのか分からないが、そもそも地球人と交配可能なレベルで近似してるのか?

地球人がまだ石器時代だった頃に水爆実験をしていた、と豪語するほど科学力に歴然たる差がある割には、地球人が大急ぎで造り上げた電子砲とマーカライトファープであっさり反撃されて基地が壊滅寸前に陥っているので、思ったほど大したことないなこいつら…。
マーカライトファープの「相手の兵器が強大で太刀打ち出来ないならその力を跳ね返せば良い」というアイディアは素直に感心した。

作中では名称の言及が無かったが、本来は攻撃兵器ではなく土木用ロボットとして造られたらしいモゲラ。DVDジャケットではラスボス級の存在感を見せているが、モゲラが大暴れするのは前半だけ。後半地球側の猛攻を抑える為に二機目が出動するが、倒れてきたマーカライトファープに押し潰されて敢えなく撃沈。頑張って穴を掘ってようやく地上に出てきたのに何も出来ずに倒されるモゲラが可愛い。
終盤の戦闘辺りがややマンネリ気味ではあったけど、精巧なミニチュアと最新技術を結集させた特撮シーンは圧巻。

「ゴジラ(1954)」と同様、もしくはそれ以上に反核や争いを続ける人類への警鐘といったメッセージ性の強さは印象的。地球が危機に陥ったら普段は争い合っている人類が団結して宇宙人と対峙する筈、というのは本作から半世紀を経た「ウォッチメン」でも描かれているけど、この手の展開は正直私としては懐疑的だし、これからミステリアンが残していったモゲラの残骸など、残留物の奪い合いになるんじゃないかななどと邪推してしまう。
他の東宝特撮映画でも感じたが、外国との共同製作ならまだしもこの時代にあれだけの外国人俳優をよく集めてきたもんだと変な所で感心してしまった。

平田昭彦の心境の変化に今一つ説得性を感じなかった。「騙されていたんだ!」って今更?ターニングポイントが分からず、話をまとめる為に最後ちょっと雑になった感が否めない。
どんなに優れた防御システムを持っていても内側から破壊されるとよわよわなのはちょっと笑った。
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