1961年の伊藤大輔監督作品。
徳川家康の嫡男がこんな哀れな末路をたどっていたとは知らなかった。母と嫁の板挟みになる信康の構図が、今川と織田と徳川の愛憎劇になるのが恐ろしい。冒頭のダイナミックなカメラワークの戦場と中村錦之助の舞がすごく絵になるし、ロングショットを多様した撮影でとても格調高い時代劇になってる。最後は「早く介錯してあげて!」と叫んでしまいたくなる。
信康の才気に憂慮して後のことを考えて今のうちに始末しようと画策する織田信長と羽柴秀吉が憎たらしいね。そして後の徳川家を存続させるために、親がわが子を討たなければならない非情さに涙するが、在りし日の仲睦まじい親子の姿をオーバーラップで見せる演出にも涙。
まあ、一番かわいそうなのは、お家騒動に巻き込まれて始末された、しのなのだが。