Maoryu002

越境者のMaoryu002のレビュー・感想・評価

越境者(1950年製作の映画)
4.0
シチリアの鉱山が閉鎖され、男たちは家族を連れてフランスへの移住を決める。旅の途中で案内人は姿を消し、数々の困難の中で人数が減っていく。しかし、子連れの男やもめサロ(ラフ・ヴァローネ)や娼婦バルバラ(エレナ・ヴァルツィ)たち数人は諦めずに国境の雪山へと入っていく。

しゃれこうべに語り掛けたり、体中をウジに喰われたりという、恐ろしい歌で始まるんだけど、内容はかなり見ごたえのある社会派ドラマだった。
これぞピエトロ・ジェルミ監督のネオレアリズモだ。

冒頭、シチリアの鉱山の困窮は先のない生活を思わせ、その後の騙され囚われる旅もまた過酷。途中で力尽きたり諦めたりする者が続出する。
同時にイタリア国内の貧困や経済格差が丁寧に描かれ、アメリカはもちろん、イギリスやフランスとも全く違った国の様子が分かる。

そんな環境でも、駅や農場や山の中と、あらゆる場所で人間らしく生きようとする人々の逞しさと力強さが素晴らしい。
ラストはちょっと楽観的過ぎるけど、人間の良心を信じる作り手の気持ちが伝わってくる。

これも制作者の好みだろうか、新婚のローザも、わけありのバルバラもやたら美人だった。
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