テレビドラマが16㎜フィルムで撮影されていた時代
日活が400万円の予算でホラー物の企画を募集していたところに
日活ロマンポルノの制作会社で助監督を務めていた飯田さんが脚本を書いて採用された短編映画。飯田譲治初監督作品の映画として製作されたが、上映は自主上映会を渋谷で数回やっただけで、ビデオ発売されたがすぐに廃盤となった。私がチーフ助監督として参加した思い出の一作。
4日の予定でクランクインしたものの現場は2日目でパンク。
特殊メイク班の予算オーバーで結局1500万円掛かったと聞く。
製作日数も10日に延長しスタッフの数も倍に増えた。
低予算なのに飯田演出は細かいカットの積み重ねで兎に角時間がかかった。主演の阿藤海さん(後に快さんに改名)のスケジュール調整が大変で、主演女優の長谷川さんは現役高校生だったのに徹夜で撮影させていたから、今なら児童福祉法違反で逮捕されるところだ。
フィルムのデジタル化が始まる何年も前だったし、フィルム合成する予算はなかったからＳＦＸは全て現場でやった。
一つ目のラバーマスクの装着からどんどん顔が変形していく過程は何種類ものマスクを作ってカットごとにメイクを変えていくから大変。最後には顔が爆発するのだが阿藤さんは吹き替えなしで演じてくれた。
変形した2人のキクロプスが溶け合ってモガキ苦しむシーンの作り物の動きや、右腕の中から出てくる右腕は私の腕だが…。
セット撮影も撮影所のスタジオを借りる予算がなかったから、廃屋の工場を借りてセットを組んだ。当時のＳＦＸとしてはレベルの高いものに仕上がったが感情をコントロールできない超能力者の悲劇という設定は、後の『ナイトヘッド』に繋がる。
この作品を名刺代わりに飯田さんはステップアップ、大成した。
撮影現場の仕切りは大変だったが、若さで乗り越えた楽しい思い出だ。
だが作品が面白いかといえば疑問符だらけ。
映画作りはどんなに駄作でも楽しいものだ。そこが難しいところ。
『乱』の黒澤組は現場も作品も素晴らしかったが、飯田組の楽しさは作品の面白さとは無縁となった。

• #羅生門

80年代スプラッターホラー映画ブームの潮流が日本にも訪れ、それが変異的に広がり特殊メイクに力を入れたVHSを媒体とする低予算インディーズ系ホラースプラッター映画のブーム？を起こした。
ピンからキリまで有象無象の映画が作られ、その殆どが今や見る事が出来ないのが残念。
かと思うと『邪願霊』とか突然アマプラで配信されたりするので油断は出来ない。
この令和の世に突然新作アニメが始まった『NIGHT_HEAD』で知られる飯田譲治初監督作品。
特筆すべきはクライマックスの奇形人間＝キクロプス達の肉体変形トランスフォームと最早敵も味方も分からない全てが融合を始めるドロドログチャグチャのスーパーバトルをCG無き時代のアナログ特撮、特殊メイクは芸術の域に達している。
クローネンバーグ『ヴィデオドローム』や『鉄男』の肉版とも言うべきカオスとシュルレアリスム世界。
ただそこに行く迄のドラマがつまらない事この上なし。
当時住んでた浦和の南浦和駅近くのレンタルビデオ屋にこの日本の｢VHSスプラッターホラー｣が大量に置いてあって借りて見た思い出。
ニューウェーブフレンチホラーのドキュメンタリー『BEYOND BLOOD』みたいに、この時代の日本で起きたVHSホラースプラッター映画のムーブメントを総括するみたいなドキュメンタリーを誰か撮って欲しい。

本来ならば生存不可能だった新生児たち。だが、とあるマッドサイエンティストの手によって『ヒトの形』になることに成功。しかしその先には避けられない戦いが待っていたのだ。

まず冒頭のテロップの長さがおもしろい！
すっごいたくさん説明してくれるからこれで2時間の映画のボリューム感になってます😂

出てくる人の演技力はまあ…目を瞑りたくなるけど、横のフレームまで極厚なサングラスをかけた阿藤快さんはずっと不気味で目を惹く。極厚の意味がちゃんとあるのもよかった。それと好きなのがすぐ怒り出す滑舌悪いおじさん！地団駄踏み過ぎて最後はタップダンスみたいになるシーンは必見！

そして終盤のバトルシーンは目を見開いて見て欲しい出来栄え😆
ネバネバとテカテカしたツヤ感へのこだわりが尋常じゃないからしっかり気持ち悪いし、特殊メイクも気合い入ってる！よきぐにゃぐにゃ🤤

音楽が横スクロールアクションの一面みたいなレトロさがあるのもエモかったです。