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麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜のオーウェンのレビュー・感想・評価

3.0
東野圭吾のミステリ小説は、謎解きの中で浮かび上がる、深遠な人間ドラマが、人気の秘密だろう。

この「麒麟の翼 劇場版・新参者」は、東野圭吾のベストセラー小説を原作にした、連続テレビドラマ「新参者」の劇場版だ。

日本橋署の刑事・加賀恭一郎が、映画版の中で殺人事件の真相に迫る。

東京・日本橋の麒麟像の下で、腹部を刺されたまま息絶えた、青柳武明(中井貴一)が発見された。

青柳の鞄を持って逃走した八島(三浦貴大)は、車にはねられ意識不明になる。
八島の恋人の香織(新垣結衣)は、八島の無実を訴えるのだった。

八島は、果たして犯人なのか?
青柳は、なぜ刺されてから8分間も歩き続け、日本橋へ向かったのか?
家族、友人、様々な人間関係の裏に、真相が見えてくる。

淡々と謎を解き明かしていく加賀役は、TVドラマ同様、阿部寛が演じ、物語の舞台となる、人形町周辺の雰囲気も味わえ、とにかく、原作に忠実に、そつなくまとめた印象だ。

中井貴一は、思春期の息子を理解しようと奔走する父親役を、いつものワンパターンの演技で、観ていてうんざりするが、息子の悠人役の松坂桃李は、心に闇を抱えた高校生を、実にうまく演じていると思う。

加賀の従弟で、相方の松宮を演じる溝畑淳平は、相変わらず捜査1課の刑事らしくない風貌だが、その身軽さが生きるアクションで見せている。

ドラマも原作のシリーズにも触れていない人も楽しめると思うが、加賀と元刑事だった亡き父との関係や、田中麗奈演じる看護師の存在が、浮いて見えるのが残念だ。

「父と息子の絆」が良いだけに、劇場版だけでは、加賀親子の描写が物足りなかったと思う。

原作を先に読むか、後に読むか、迷いどころだが、ミステリのオチは、知らないほうがドキドキできると思う。

しかし、この作品は、原作から頭に思い描いていた情景と、比較してみるのも悪くないと思う。
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