drinkva

スキャナーズのdrinkvaのレビュー・感想・評価

スキャナーズ(1981年製作の映画)
-
三つ目がとおるにそっくり。手塚治虫はザフライをベストに挙げている


出演は、クローネンバーグ監督の「戦慄の絆」(1988年)に顔を出しているスティーヴン・ラック、カナダのジャック・ニコルソンとも呼ばれる「トータル・リコール」(1990年)「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997年)のマイケル・アイアンサイド、カルト的テレビシリーズ「プリズナーNO.6」(1967年~1968年)の主人公を演じたことで知られるパトリック・マクグーハン、「おもいでの夏」(1970年)「リーインカーネーション」(1975年)のジェニファー・オニール。
頭部破壊の特殊メイクアップを担当したのは、クリス・ウェイラス、スティーブン・デュプイス、他。本作の後ウェイラスは、スティーブン・スピルバーグの希望で「レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫」(1981年)の顔面崩壊場面を担当した。ウェイラスは、クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」(1986年)でもタッグを組んでいる。また、「エクソシスト」(1973年)のメイクアップ・アーティスト、ディック・スミスがクライマックスの超能力バトルのメイクを担当している。
音楽は、本作の後、クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」「戦慄の絆」他ほとんどの作品を任されることとなるハワード・ショア。

https://renote.net/articles/13120


『スキャナーズ』(81)で描かれる、コンセック社の超能力実験はフィクショナルな、いかにもSF的なものだが、史実に着想を得ている。1950年代。第二次世界大戦が終結し、米ソは直接対決の無い冷戦時代に突入。アメリカは第二次大戦中にナチス・ドイツが行った非人道的な実験を指揮した科学者たち(戦争犯罪者も含む)を召喚することで実験データを掠め取ることに成功する。
 加えて、朝鮮戦争において北朝鮮側(中国共産党軍)に捕虜として囚われた兵士が共産主義者として洗脳されたことに着目し、ナチスの実験データをベースに、薬物を用いたマインド・コントロール/洗脳実験を始める。このプロジェクトは「MKウルトラ計画」と名付けられた。自白剤を使用したソ連のスパイへの尋問。妊婦への投薬による赤ん坊への影響実験。超音波を利用した記憶の消去実験。これら非人道的な実験が被験者の同意無く勝手に行われた。

 その実験の中には70日以上LSDを投与し続けるといった、凄惨を極めた拷問実験もあった。当然、被験者は実験により精神を破壊され、廃人となる者を生みだした。むごたらしい被害者を出したMKウルトラ計画は、後年のCIA長官により資料を破棄させられる。この資料破棄によって「MKウルトラ計画」は残酷でミステリアスな概要以外、全てを失ってしまう。これが多くのクリエイターたちの創作意欲をかきたてることとなった。

 「洗脳/マインド・コントロール」「人権無視の非道さ」「人体実験」「証拠破棄」…… これらフィクション映えする要素は様々な創作物に取り込まれていく。洗脳実験は『ボーン・アイデンティティ』(02)や『エージェント・ウルトラ』(15)を始め、様々なスパイ映画やサスペンス映画へ。実験により精神を破壊された人々は『陰謀のセオリー』(97)『RED/レッド』(10)などに登場。そして、妊婦に対する薬物投与実験は『炎の少女チャーリー』(84)『スキャナーズ』に影響を与えた。

https://cinemore.jp/jp/erudition/1976/article_1977_p1.html
drinkva

drinkva