Fitzcarraldo

ポセイドン・アドベンチャーのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

2.2
なんでも自分で体験して書くというスタイルのスポーツライターから、作家へと転身したPaul Gallico原作。

David Leanの片腕としてずっと一緒にやってきたRonald Neame監督作。

脚本には"The Towering Inferno"(1974)のStirling Silliphant、Wendell Mayes。


オープニングから特撮。
浮かぶ模型の船。

◯操縦室
11メートルの波。
最大18メートルの波…と船長。
何かに掴まらないと立ってられないほど傾く船体。

次のカット…
ぎゃーぎゃー喚き散らし悪態をつくErnest Borgnine演じるニューヨーク市警の警部補マイク・ロゴと、Stella Stevens演じる妻のリンダ・ロゴの客室へ船医が酔い止めの薬を渡す。ずっと説明台詞…もう見てられない。

そしてカットが変わると…
突如としてデッキの上のリクライニングに座り優雅に編み物をしてるShelley Winters演じるベル・ローゼンとJack Albertson演じる夫のマニー・ローゼン。

その老夫婦の横をランニングをする男。

え?
気持ち悪すぎるんですけど…
なにこの不自然な繋ぎは?

さらに次のカットでは晴天をバックに説明台詞連発でハゲ散らかすGene Hackman演じる牧師のフランク・スコット。

んーさすがにそれは無理があるだろ…めちゃくちゃ不自然な編集で気持ち悪すぎる。

掴まらないと立っていられなかっほど海は大荒れだったのでは?もう2シーン先ではデッキで編み物できてしまうの?デッキでランニングできちゃうの?なんで?天気は?海は?一瞬で時化は抜けたの?

さらに次のシーンで青空って…これは雑すぎるだろ?さすぎに…

そしてさらに次のシーンで操縦室に戻ると…当然のごとく天気が悪い。窓は曇っている。曇っているというか灰色で塗り潰されているだけなのだが…前のカットで晴天だったのに?全く繋がらない!いい加減すぎる。記録係は何をしてたのか?編集者は指摘しなかったのか?監督はこれでOKを出したのか?

カットとカットの間には、それなりに時間が経過していると主張するのならば、時間経過を表す俯瞰映像なり…何か他の表現を取るべき。これでは時間が経ってるようには見えない。


転覆シーンは…まあ、いいとしても…タイタニックを先に見てしまっているために既視感しかない。本作の影響からタイタニックができたという貢献度を鑑みても…うーん別に驚くことは何もない。


そもそも海底地震による大津波は一波しかないのか?また模型の船のシーンになるのだが…たったひと波に飲み込まれ一気に転覆したように見えたのだが…ひとつの波でひっくり返るものなのか?
大波を前にして舵を切る船長もどうなかと思うし…波に対して船体を横に向けたら…そりゃ転覆するだろうに…船舶免許もってないんじゃないかという無能ぶり。


天地が逆さまになる。

ここから、なぜかハゲ散らかした神父であるフランク・スコットが突如としてこの場を仕切りだす。特に仕切る理由がわからない。盛大にイキってるようにも見え…全く感情移入できない。なにこのキャラ…と不快感しかない。スポ根全盛期の時代ならまだしも、現代でこのキャラは厳しい。


転覆したら何分もつのか?と映画を見ながら疑問に思っていたのだが…Carol Lynley演じるバンドのボーカルであるノニーが、子どものロビンに聞く。

ノニー
「いつまで浮いてるの?」

ロビン
「アンドレア・ドリア号は沈むまで10時間だ」

あっそうなんだ…しかし、海底地震の津波であれば、二の矢、三の矢の高波に襲われるのでは?そしたらもっと早いのではないのか?まぁ別に映画だから何でもいいのだが…あまりに嘘をつきすぎてしまうのは、映像の魔力というか、その映像を見た人の資質によっては真実よりも強く印象として心に残ってしまうこともあるので、気をつけなければいけないところだと思うけど。



天地が逆さまになった船内で、上へ上へと目指す一行。やはり目の前にどんどん水が迫って来ると、途端に画に迫力が増して、こちらもドキドキしてくる。


途中、船医率いる一団と遭遇する。

ハゲ神父
「そっち側に行くと船首だ」

船医
「そうだ」

ハゲ神父
「待て!行っても出られないぞ」

船医
「なぜ?」

ハゲ神父
「船首は沈没した。海の中だ。行くなら船尾の機関室へ」

船医
「機関室はダメだ」

ハゲ神父
「なぜわかる?」

(お前もな!)と力強くツッコミを入れたのは私だけではないはず。

船医
「爆発したんだ。出口は前しかない!」

ハゲ神父
「機関室を確認したのか?実際に見たのか?」

(お前もな!)と力強くツッコミを入れたのは私だけではないはず。

船医
「見なくてもわかる」

(なぜ?根拠は?)と力強くツッコミを入れたのは私だけではないはず。

ハゲ神父
「そっちじゃない!」 

(だから、なぜ?君だって確認してもいないのに、どうして言い切れるわけ?その根拠は?)と力強くツッコミを入れたのは私だけではないはず。

これは漫才なのか?観客がツッコミ役としてツッコむことで成立するクソおもろない漫才でもやっているのか?



刑事ロゴとハゲ神父が言い合う。

ロゴ
「なぜわかる?見たのか?なぜそう断言できる?」

ハゲ神父
「取り引きしよう。機関室の場所を探してくる。見つかったら私に従うんだ!ダメなら前に行く。いいか?」

ロゴ
「時間は15分。それまでに戻らなければ前に行く」

ハゲ神父
「決まりだ」

(あのーその15分っていう時間は、どこから割り出したの?なんの根拠があって15分って言い切れるの?他のメンバーもなぜこの2人のやり取りを静観してるの?君たちの意見はないの?いい加減、誰かツッコんでよ…)


別の場面。
水の中を潜って進まなくてはいけないという…

急に勇敢になる老婦人ローゼン。
ずっとビビリで何かにつけて臆病で、後ろ向きであったくせに、ここにきて途端に立ち上がり、頼んでもないのに自ら進んで勝手に飛び込んでいく。元水泳選手だったどうこうとかいうとってつけた説明台詞があったが…そんなことで納得いく観客いるのか?あまりも唐突にキャラ変したとしか思えないんだけど。観客をバカにしてるとしか…思えない。

そして水に上がった瞬間、発作的なものがあって死ぬローゼン。

うーん。理解に苦しむ。


先へ進む…

いよいよ機関室の扉の前。
突如、蒸気が噴き出して進めない。
ハゲ神父が、いよいよ神父らしく自らが犠牲になる。

蒸気が噴き出ているバルブに飛びついて、懸垂するような要領でバルブを閉めていくのだが…そもそもそのバルブの開け閉めが原因で蒸気が噴き出してるの?そういうことじゃないんじゃない?

そして、わざわざ手を離して落っこちなくても、飛び移れそうな距離感に見えるけど…さらに蒸気が手に当たりまくってるけど、そんなに熱そうなリアクション取ってないし、手も別に膨れ上がったりしてないしね。

あっそこで落ちるんだ。なんで?っていう不思議な印象。


いよいよ、すったもんだで、機関室。
中へ入ると完全に行き止まり。

鉄板が一番薄いところだと、2.5cmしかないと…それは途中でも機関室へ向かう根拠のひとつとして、挙げられていたけど。

2.5cmの鉄板って薄いんだ…それって、じゃあどうにかしてブチ抜ける程度なんだ?と半信半疑でラストまで見続けてきたが…

何をしたかと言うと…ただ鉄板を叩いて、ここに生存者がいると訴えただけ…え?人任せなの?自分たちでどうにかしてブチ抜くんじゃないの?

静かに!外に誰かいる!的な台詞。
諦めるな!もっと鳴らせ!的な台詞があり、ガンガンと音を出す。

すると、外側から鉄板を焼き切る。

え?これって…結局、外に誰もいなかったら、全く助かってないってことやろ?あの鉄板をブチ抜く術はないんやろ?

たまたまやん…。

本当にたまたまヘリで助けに来てただけやん。めっちゃモヤモヤする。

しかも海難救助に向かうヘリに、あんな鉄板を焼き切る工具なんて積んでるのか?

これ一番やっちゃいけないオチだと思う。
たまたま来てましたという…。

船尾に行けば助かるんだ!と信じられるだけの根拠がないと…他人を巻き込んで連れていくのなら…はい、目的の場所に着きました。行き止まりです。あとは外側から誰かが、助けてくれるまで待ちましょう!これでは…ちょっと、どうなんだろう?

物語としても…このオチはかなり低レベルだと思う。
Fitzcarraldo

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