螢

すべての道はローマへの螢のレビュー・感想・評価

すべての道はローマへ(1948年製作の映画)
3.5
変人だけどお人好しの幾何学者の青年と、わがまま系ハリウッド女優の、ドタバタ珍道中系ライトラブコメ。「世界一の美男」の代名詞だったジェラール・フィリップの、美男さゼロのコミカルさが秀逸です。

ローマで開かれる学会に参加するため、世話役の姉を連れてフランスから車を運転する、幾何学者のガブリエル。
彼は、道中立ち寄ったレストランに備え付けられた電話ボックスの中で「自殺の仕方」と「追手」について大声で話している謎の美女ローラと出くわす。
美女は高級なアメリカ車に乗って颯爽と立ち去るけれども、間をおかずに、レストランに彼女を追っている男女が現れる。

世間知らずでお人好しのガブリエルは、なにやら事件に巻き込まれているらしい彼女を助けなければ!と、慌てて彼女の乗る車を追いかける。そして、追手を欺くため、彼女の運転手の代わりに彼女を目的地が同じローマまで送ることにするけれど、これが珍道中の始まりで…。

実は、ローラの正体は、仕事先のローマに向かってたアメリカの有名女優。電話ボックスでの自殺話も、次に出演する映画の演出について話し合っているだけだった。追手の男女の正体も、スクープを狙うマスコミ。
彼女は暇つぶしとばかりに、自分のことを知らずに本気で助けようとするガブリエルの前で、悪の組織に追われる女を演じてみせて…。

ストーリー自体は正直、ご都合主義というか、手の込んだつくりではないです。

でもその分、なにも考えずに役者さんたちのコミカルな演技を存分に楽しめます。
変人だけどお人好しなガブリエルを演じた、1940年代後半〜1950年代の美男の代名詞だったジェラール・フィリップの徹底的な三枚目ぶり。
ザ・女優という雰囲気全開で、コケティッシュであざといのに、どこか憎めないローラを演じきったミシュリーヌ・プレール。

何も考えずに、この二人の魅力を楽しむ映画と思ってみると、とても素敵な作品です。
脇を固める役者さんたちの演技もまたいい。

ジェラール・フィリップは、アラン・ドロンの前の美男の代名詞だそうですが(ドロンが売れる前にフィリップはわずか36歳で他界)、同じ「美男」でも、アラン・ドロンとは全く違う魅力で、比べて観るのも楽しいです。
なんでも、フィリップは「知性美」、ドロンは「野心美」カテゴリーだったとか。

気楽に楽しく観られる作品です。
螢